いつも書いているようにミステリは嫌いなのだが(→2005.8.24/2006.3.31/2006.5.19/2008.12.5/2012.7.10/2025.7.4)、
綾辻行人『十角館の殺人』がたいへんな傑作という評判を聞いていたので、素直な心で読んでみたのであった。
なんでも世間では、すべてがひっくり返る「あの1行」が衝撃的とのこと。どこで出てくるのかワクワクしつつ読む。結論から言うとですね、きちんと面白かったです。まあ面白かったというか、よくつくったなあと感心する気持ちか。
ほとんど嫌悪感を抱かなかったのは、内容が犯罪と謎解きというミステリの目的にきちんと収まっているからだと思う。
よけいな社会的な事象を抱え込まず、純粋なミステリの娯楽として割り切っている分、現実を歪める要素が少ないのがいい。
ただ、僕にあまりにもミステリのセンスが欠けているせいで、ミステリ大好きっ子の皆様が受けたほどの衝撃は得られず。
そりゃあ無理もないのだ。アガサとポウとエラリイの名前は知っているけど作品は読んだことない、そんな程度なんだから。
ヴァン=ダインについても20個の規則を設定した人、という認識でしかない。それ以外は、そういう作家がいるんだなーと。
「江南(かわみなみ)」さんが「コナン」になるのはわかるが、「守須(もりす)」で「モーリス=ルブラン」が出てこない。
今回、感想をネットでチェックする中で、『名探偵コナン』の毛利蘭がモーリス=ルブランだと初めて知ったくらいでして。
そんな程度の人間には、この作品をきちんと楽しむ資格はないのである。世の中、知識のない奴が悪いのである。というわけで、「あの1行」についても僕の反応は「……誤植?」という実にお粗末なものなのであった。
エピローグで出てくる壜についても完全に忘れていて、戻って戻ってプロローグまで戻ってやっと思いだす、そんな脳みそ。
自分は本当にミステリに興味がないのだ、ということを思い知らされた。おーすごいすごい、程度の感動で申し訳ない。
一点、ミステリ研究会のその他のモブメンバーに知られないように仲良し集団だけで出かけるのがいちばん大変じゃねえか、
そういう思いがないことはないけど、些事を突っつくのは野暮な気もするのである。まあ作者さんはお疲れ様でした。さて先日の芸術鑑賞的なイヴェント後に学年の先生方で飲み会があり、そのお店にテーブルマジックをする方がいた。
目の前で披露されるマジックに「おおー」となったのだが、学生時代にテーブルマジックを見破る修行をした先生がいて、
タネがことごとくわかるとのこと。で、相手がタネをわかってしまった場合にはチップをもらわない慣習があるとのこと。
それを聞いて僕は、実はマジックに素直にだまされる方が幸せなんじゃないかと思った。「おおー」とチップをあげる方が、
テーブルマジックにかけてきた努力に正当な対価を支払う方が、実際にはみんな幸せなんじゃないのと思ったのである。この作品について、ミステリ界の常識がないと100%楽しめない点をマニアのタコツボだと批判することは可能だろう。
でもそこは素直に「おーすごいすごい」でいいと思ったわけだ。ミステリ界の常識がなくても十分だまされて納得できるので。
われながら丸くなったもんですかね。まあもはやミステリとの相性を改善する気のない、半ば諦めの境地とも言えそうだが。