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2018.8.7 (Tue.)

仮設言い訳(後日消します)

誰も読んでいないと思われるこの日記ですが、7月以降かなり更新が滞ってしまいました。
理由はひとえに、日記で書かなくちゃいけない行動をとりすぎたことです。ネタがないのではなく、その逆。
南へ行った翌月には北へ行き、さらに自主的に流罪になるなど、狂ったように旅に出ました。
しかも平日は平日で日々、東京を歩いてまわっております。夏休みも写真の整理だけで終わりそうです。
やっている企画は一流だと自負しているのですが、いかんせん書く方が追っつかない(2年前から)。
なんとかしようという意思だけは持ち続けておりますので、ご容赦ください。本当に申し訳ございません。



2018.8.5 (Sun.)

マサルと遊ぶ約束をしたのだが、毎回毎回歌舞伎町で謎解き(→2018.3.42018.4.22)では芸がない。
そしたら「Maker Faire Tokyoへ行ってみませんか」という提案がマサルから出たので、「じゃあそっちで」と返事。
マサルは午前中に別の用事があり、こっちはこっちで千代田区探検が終わらないのでそれに取り組んでおり、
会場のビッグサイトがある国際展示場駅に集合できたのは14時過ぎ。ドトールで軽くダベると、いざ出陣。

そもそもが「Maker Faire Tokyo」とは何なのか、という話である。「地上最大のDIYの展示発表会」とのことだが、
もともとはアメリカのDIY雑誌『Make』からスタートし、現在は世界各地でイヴェントとして盛り上がっているとのこと。
「Maker Faire」という形で東京で開催されたのは2012年からで、2014年からはビッグサイトに定着している。
とにかくロボコンに出たかった思春期からずっと理系への憧れを捨てきれないマサルには、見るものすべてが尊敬の対象。
対する私は東工大大学院修了という経歴を持ちながらやったことは教員とのケンカだけであり、やはり憧れがあるわけで。
そんなふたりが気ままに見てまわって聞いてまわって写真を撮ってまわったレポートを、ざっくりご紹介するのだ。
なお、今日の日記は出展者の情報を極力オープンにする。拡散希望する勇者たちばかりなので、彼らに敬意を表して。

マサルの興味関心をベースにしているので、入口からかなりバカ丁寧に見ていくことになり、そうとう時間がかかった。
計画的に動くこともなく、ひたすら目についたものに反応していく感じ。で、気が向いたらちょろっと出展者の話を聞いてみる。
「地上最大のDIYの展示発表会」という触れ込みだが、実際には扱っている対象がかなり広範囲にわたっていて驚いた。
クリエイティヴな要素があればなんでもありなのである。その分、ソフト的にもハード的にも非常に刺激にあふれている。
まず最初にあったのがボードゲームの展示で、なるほどこれもまたクリエイティヴだな、と納得しつつ話を聞くのであった。

  
L: まずは建築家の卵のためという「LEGO Architecture Studio」。白いレゴには箱庭療法的なものを感じるのですが。
C: 加藤明洋「TRUSTLESS LIFE」。ボードゲームは結局のところ、ミニマルでポップなデザイン勝負な気がします。
R: 24th floor「マネースパイラル」。仮想通貨をテーマにしたゲームとのこと。じっくり遊ぶ時間が欲しいです。

いきなり結論じみたことを書いてしまうと、やはり見た目のインパクトがないと多数の中に埋もれてしまうのである。
ヴィジュアル的に惹きつけるものがあるというのは大きいなあ、と思いつつ見ていく。まず何よりも目立たないとダメだ。
その点で、マサルも僕もグイグイ惹きつけられたのが数学模型。世の中の大半の人々は専門的な数学の知識がないが、
ヴィジュアル先行でパンチをかまされると一気に引き込まれる。数学の苦手な生徒も得意な生徒も楽しめると思うなあ。
冷静に考えると、方程式をグラフにすることってとんでもない発想だと僕は思っているが、その凄みをあらためて味わった。

  
L: ほりたみゅ「数学模型」。こちらはグラフを立体化した「線織面模型」で、左の2つが双曲放物面、右の2つが一葉双曲面。
C: 「自然数の平方和証明模型」。1^2+2^2+3^2+…とやっていくと1/6・n・(n+1)(2n+1)となって、6個で直方体ができる。
R: 「正n胞体展開模型」。多胞体は4次元における超多面体(3次元の多面体に相当)。120(青)や600(赤)はもうすごい形だ。

序盤は学校の先生や現役の学生による作品が並んでおり、ある種の真面目さとユルさの共存がなかなか心地よい。
パペットロボットは見事に技術科と家庭科の融合からスタートしているが、これ、こだわればとことん研究できる。
中学生たちがあれこれ自分好みの方向に伸ばしていけば、めちゃくちゃやりがいのある授業になってしまうだろう。
個人的に爆笑したのが、ベルト駆動1球ニキシー管時計。ニキシー管はやはり非常に人気のあるアイテムで、
今回あちこちで見かけたのだが、「値段が高いので1個だけでなんとかしました」というこちらの工夫に脱帽である。
(名古屋駅の東急ハンズ「男の書斎」でニキシー管の時計を売っているけど、高くて手が出ないんだよなあ……。)
また、マサルも高く評価したのが鉄球を使った電子迷路。傾けて鉄球を動かすだけでは終わらず、発光する場所へ行くと、
迷路の一部が回転したり扉が開いたりして、より奥深い仕上がりとなっている。サイズを大きくすると絶対凄くなるね。

  
L: 技術教室グループ「パペットロボット」。中学校技術科の教師が中心だそうで、なるほど技術科と家庭科の融合だ。面白い。
C: 神奈川工科大学オリジナルロボットプロジェクト「ベルト駆動1球ニキシー管時計」。移動して時・分・秒の位置で数字を表示。
R: 名古屋工業大学 Edison Project「A mazeing!!」。床が回ったり扉が開いたり鉄球がワープしたりと存分に楽しめる。

さてそんな具合に見てまわっていたら、何やらパソコンのBEEP音で曲を演奏しているような音が聞こえてきた。
こりゃなんじゃと行ってみたら、高電圧のテスラコイルを放電させた音での演奏だった。2つ使ってパートを分けている。
知っている曲ではなかったがファルコムのソーサリアンらしく、なるほどゲームミュージックは相性いいよなと納得。
見た目も派手だし、曲目も工夫すれば絶対に盛り上がる。調べたら、P-MODELの平沢進が使ってんのか! さすがだ!

  
L: 高エネルギー技術研究室、テスラコイルで発生させた稲妻を使った演奏。後ろから黒い紙で稲妻を見えるようにしている。
C: 演奏の様子。ケーブルをあちこちワンサカつないでいるのが初期のYMOのようだ。そういうのには憧れてしまうのよ。
R: A4walleT「A4walleT 薄すぎる財布」。紙を折りたたんで財布にするキット。元プリンスの漱石、白雪姫の諭吉などが面白い。

ありとあらゆるジャンルでクリエイティヴィティが繰り広げられていたのだが、なるほどと思ったのがファッション。
テクノロジーを直接的にファッションの要素として取り込む、そういう発想がだいぶ一般化してきているなと思った。
同じようなジャンルとして、手芸とテクノロジーを組み合わせた作品も多く見られた。これは2つの方向性がある。
「美/カワイイ」というソフトウェア的な概念をテクノロジーのハードウェアによって実現するという方向性と、
むしろ逆にテクノロジーやハードウェアそのものに「美/カワイイ」という要素を見出すという方向性である。
この両者のせめぎ合いが、どちらも個人の作品レヴェルで活発に実現されているところがすごいなと。いい時代だなと。

  
L: すいラボ「電子部品アクセサリー」。電子部品はカワイイのである。無限にカチカチできるキーホルダーを買ってしまったわ。
C: denha's channelのLEDバッジ。これも電子部品の「カワイイ」を直接的に取り出した作品ということになりますわな。
R: GIF+で展示されていた、グンゼの「ニット配線」。これを使えば光るバッグも光る手袋もつくれますよ、っていう作例。

そんなところで登場したのが、マーブルマシンと呼ばれるおもちゃたちである。世間一般にはピタゴラ装置でおなじみ。
これにはマサルも僕も夢中で見とれてしまうのであった。こんなん、キットで売ってくれれば絶対に買うんだけどなあ……。

 denha's channelのマーブルマシン。どれも魅力的なギミックを持っている。

マーブルマシンはなぜこんなにも魅力的なのか。洗練された機構は、決して何かの役に立つためにあるのではない。
ただ純粋に、純粋に機能を果たすのみである。そして、ただただ同じことだけを繰り返す。等速で運動するだけだ。
でもその小さな球たちの冒険は、たまらなく愛おしいのである。破綻なく完結させる技術に対する憧れだけではなく、
やはりどこか「美しさ」「カワイさ」を感じずにはいられない。マーブルマシンの不思議な魅力にただ酔いしれるのであった。

  
L: 球をポンと飛ばして六角形で受け止めるというギミック。炎の男・三っちゃんもびっくりの精度を誇る。
C: 左端の階段が上下にスライドすることで球が一段上がる仕組みになっている。単純な機構だけに美しい。
R: 透明なアクリル板が絶妙な角度で設置されており、球がゆっくり斜め下へと沈むように移動する。

「美/カワイイ」あるいは「役に立たないけど面白い」というのは、かなり強い行動原理になっていると思われる。
まあ中には、どれだけくだらないことに全力を傾けるかにこだわっているチームもいっぱいいたけど。
価値観は人それぞれだが、そこに向けてのエネルギーの投入というスカラーはお互い十分わかっている。
褒め言葉にしろ作品の購入にしろ、こちらの敬意や評価の表現形態も、価値観によってさまざま。何から何まで多様だ。

  
L: ホームセンターてんこ「ミニチュア工具」。ミニチュアとはカワイイの極致のひとつであると思う。買ってもうたわ。
C: つつうらら「ハッピーフォンホルダー」。人の温かみを感じるスマホホルダーとのことで、温かみを感じているマサル。
R: 後ろから見るとこんな感じになっております。こういう一工夫加える感じの作品もけっこう多かったですな。

じっくり見ていったせいで、後半は本当にざっくりと見てまわった感じになってしまった。終了時刻も近づいているし。
体験型のゲームなんかもいろいろあって、チャレンジさせてもらったものもあったので、いくつかご紹介。

 
L: Hands-On 部「デッキブラシでカーリング」。写真はチームの方に撮影していただきました。
R: 全力でゴシゴシやるのでけっこう疲れる。「そだねー」とか言っている余裕はぜんぜんなかったです。

  
L: 月刊大人の起業「VRブロック崩し」。自分がバーになってボールを撥ね返すという設定。バツ印がスタートの合図。
C: 挑戦中のマサル。手元のバーを握ることで位置を判定するとのこと。反復横跳びできていませんの図。
R: こちらは金網デスマッチ……ではなく、ドローンのレースを開催中。すげえ時代になったなあ、と思うわ。

雨の日だけ抜けるというエクスカリバー傘にもマサルは挑戦。地面から煙が噴き出し、雷の音が鳴ると、
それまで抜けなかった傘を抜くことができるというアイデア勝負の作品である。実際にやることに意味がある。

 
L: Azb.Studio「エクスカリバー傘」。雨の日だけ抜けるということで、雨の演出が始まると……
R: このように傘を抜くことができるというわけです。正当な王であるかどうかは関係ない模様。

そんな具合に後半もあちこちでいろいろ体験していたのだが、ここでもトップレヴェルの衝撃を受けた展示が。
電卓でおなじみの7セグメントディスプレイ(6本の線+点1個で7つのI/Oだから7セグメント)がメインの展示の中に、
フリップドットディスプレイ(表と裏で色を変えた点をひっくり返して表示する仕組み、LEDのやつの元祖)があり、
それでテトリスが遊べるという展示があった。なんてオシャレなことを思いつくんだ!とマサルも僕も大興奮。
残念ながらフリップドットディスプレイ自体が失われつつある技術だそうで、売るとなると15万円くらいになってしまうとか。
いやいや買い手はいくらでもいるでしょーと思うわれわれ。インテリアとして十分に需要があると思うんだけどなあ。

  
L: 魔法の大鍋「7セグメントディスプレイ大集合」。パタパタ変化するさまは、機械制御だけど非常にアナログ感がある。
C: フリップドットディスプレイ。電磁石で表裏を回転させる。蛍光イエローは目立つだけでなく、紫外線の退色に強いそうだ。
R: 特に衝撃的だったのが、フリップドットディスプレイによるテトリス。これは絶対に売れるよ! つーか欲しい!

かっこいいだけでなくバカバカしいものにも魅力的なものがいっぱい。マサルが注目していた「セルフ記者会見セット」も、
ついにここで登場。実演してくれたが、頭を下げるとちょうどあの感じでフラッシュが点滅。これがまた絶妙な加減なのだ。
こういうことを思いつくのもうらやましいし、実現できる技術力もうらやましい。ドラえもんの世界に片足つっこんどるね。

  
L: nanka「JIKKALARM」。実家を思い出させる目覚まし装置ということで、包丁の音と味噌汁の匂いが出る。
C: ねくある [NEXT+α]の「論文まもるくん」。自動的に「Ctrl」と「S」を押してくれる装置で、高い評価を得たそうだ。
R: 同じく、ねくある [NEXT+α]の「セルフ記者会見セット」。写真だとフラッシュっぷりがわかりづらいのが残念だ。

最後に音楽方面の展示を見たのだが、なるほどこれまたクリエイティヴィティが炸裂するジャンルである。
大爆笑してしまったのが、ツイスターゲームでクラブミュージックを演奏する装置。色にそれぞれ音が割り当ててあり、
ベースとなるリズムを鳴らしながらその場で音に変化をつけて音楽として成立させている。いや、発想がすごい。
これを男2人のバカバカしいヴィジュアルでありながらめちゃめちゃグルーヴィーに演奏したら最高だろうと思う。

 
L: mi:muz「缶たたき機mini」。いい音鳴らしていたけど、これがきちんと曲を演奏するともっと魅力的だと思う。
R: Inagi Records「ツイスターゲームシーケンサー」。割り当てた音を組み合わせつつ変化させて演奏。考えたモン勝ち。

では「Maker Faire Tokyo」に対する僕なりの結論。ありとあらゆるジャンルのクリエイティヴィティが詰まっていて、
ありとあらゆる方向から刺激が来る、とにかく面白ければなんでもいいという非常に贅沢なイヴェントである。
これは絶対に、お客さんになるよりも出展者で参加する方が楽しい。何もできない自分がひたすら歯がゆかったなあ。

さて、展示を見ていて気がついたのは、このクリエイティヴィティあふれるイヴェントで目立つには、
2つの力が必要になるということだ。それは「何をやるか」と「どうやるか」、whatとhowという2つの発想力だ。
言い換えれば、想像力と創造力ということになるのかもしれない。この両輪のバランスが絶対に欠かせないのだ。
理系のモノづくりイヴェントということで、展示は全体的に「どうやるか/how/創造力」に力が傾けられている印象だ。
しかし多くの人を立ち止まらせるためには絶対に、「何をやるか/what/想像力」が十分に練られていなければならない。
これは目的と手段の関係そのものだから、必ず目的が手段の上に立つのだ。ブレない目的=whatで勝負はほぼ決まる。
そのうえで序盤で書いたように見た目のインパクトを確保するとなると、デザインの左右するものはやはりかなり大きい。
世の中、実にいろんな才能があるなあと思う。whatを見つける才能、howをやり抜く才能、デザインで価値を足す才能。
そして才能を組み合わせるのもまた才能。「Maker Faire Tokyo」は、そんな才能の片鱗があちこちでギラギラしていた。


diary 2018.7.

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