毎日お昼にはサラダ(とチキン)を食べているのだが、重要なのがドレッシングである。
ドレッシングがなけりゃサラダなんて草ですもん、草。いろいろと種類を用意して飽きないように工夫をしている。
健康上の理由でサラダを食っているわけだから、できるだけノンオイルを条件にして選んでいるが、正直満足度が落ちる。
それで、結局のところドレッシングってのは油が旨いんだなあ、と実感している。油を減らしたものやノンオイルは、
明らかにイマイチなんだよなあ。油が細胞壁に浸透してひたひたになった野菜が旨いのよね。ガマンしてますが。
週末に思い切って自腹で買ったDVDプレイヤーがたいへんいい感じである。授業でしっかり活用しております。
しかしBlu-rayも見られてHDMIと同軸出力までついているプレイヤーを1万1千円ちょっとで買えるのにはびっくりだ。
軽くて持ち運びも簡単だし。いやはやすごい世の中になったもんだ、と心底思う。
体育館で講演があったのだが、やたらめったら寒くてたまらない。特に下半身が寒い。
そしたら職員室に戻る途中、他の先生方から「今日はそんなに寒くなくってよかった」という声が。
唖然としていたらいつも昼にサラダしか食べていないことを指摘されて、結局それがすべての原因か、と理解した。そう、ここ最近の体調不良は「よろしくないダイエット」のせいだったのだ。肩こりと上腕部の筋肉痛がひどいのは、
首を支える筋肉が落ちた結果なのである。確かに腕が以前より細くなったし、ズボンの太ももにもだいぶ余裕が出てきた。
ダイエットで脂肪が減ればよかったのだが、実際のところは筋肉が減ってしまっていたのである。それでやたら寒いのだ。
とりあえずタンパク質多めの食生活に変えなければ、ということで、明日からは昼をサラダとチキンで行くことにする。
しかし自分で気づかないうちにそこまで筋力が落ちて追い込まれていたとは。日頃の運動不足が凄まじいってことか。
サッカーW杯・コスタリカ戦。いやーしょっぱいしょっぱい。なんだこりゃ。
相手がヨーロッパではないからって、きれいに点を取ろうとしすぎである。それはコスタリカを舐めているということ。
この後のスペイン戦のことを考えれば勝つしかないし、得失点差を考えれば点をいくら取っても取りすぎることはない。
それにもかかわらずロースコアあるいは引き分けでもいいみたいなゲームプランとか、理解に苦しむ(婉曲的表現)。
これでドイツ戦の勝利が完全に無意味になってしまった。あのゴリアテを倒すダビデみたいなチームはどこへ行ったの?
ちなみにこの試合は噂のABEMAで見たのだが、確かに本田の解説はすばらしい。日本で褒められるのは本田さんだけだね。
日記そっちのけでテストづくりで申し訳ない。とても日記を書く余裕がないところにW杯が始まってああー
240人分のレポートまとめ作業をどうにか終えた。体調不良とテストづくりのプレッシャーに苦しみながらの完遂である。
レポート自体をもうちょっと早い時期にやっておくべきだったのだが……。反省する暇もなくお次はテストづくり。
サッカーW杯・カタール大会が始まった。日本はGLでドイツ・コスタリカ・スペインと戦うということで、もう絶望的。
僕はハリルホジッチ解任(→2018.4.9)によりすっかり日本代表を積極的に応援する気が薄れてしまって(→2018.6.15)、
それがずっと今も続いている。森保監督を批判する気はないが、田嶋がいると思うと正直応援できねえ(→2018.7.8)。
やはり有耶無耶にはできないから、田嶋が存在する限り今後もこういうスタンスが続くと思うと淋しい気分である。まあとにかく初戦・ドイツ戦なのだ。一日中雨の休日ということで一歩も外に出ないでレポートまとめ作業をしていて、
その量が実に240人分もあり、まったく終わらないままキックオフ。テレビ中継の音声で聞きながら作業メインで過ごす。
ちょっと見た前半があまりにもひどいデキで、すっかり見る気をなくしたのもある。本当に見ていられなかった。
それでも作業に疲れたこともあって、いちおう後半途中からはテレビ観戦メインに切り替える。ぼけーっと見ていたら、
前半とは別人……いや別チームのような逆転劇。冨安の投入すら把握していなかった僕には何がなんだかわからなかった。
でもこれはおそらく前半からきちんと見ていたとしても、やっぱり事態をきちんと把握できなかったんじゃないかと思う。
あのドイツ相手に猛然と襲いかかって人数をかけて同点に追いつき、浅野がよくわからないうちに逆転弾をぶち込む。
姉歯メンバーとはここからSMSでやりとり。やはりサウジがアルゼンチンに勝ったのが大きいね、という感じ。さすがにいろいろ考えずにはいられない展開だったので、とりとめないけど思ったことを書き連ねてみる。
結論から言うと、史上まれに見るレヴェルで完全に戦術で勝った試合だった。Jリーグで実績を積んだ森保監督の面目躍如。
どこまで狙っていたのかわからないが、前半は死んだふりで後半は選手交代で優位に立つ作戦が完璧にハマった格好だ。
もちろんこの戦術を実現するには、ヨーロッパレヴェルの個の力が必要になる。ふだんヨーロッパでプレーしていないと、
力加減がわからなくて成功しなかっただろう。その点、ドイツでプレーしている選手が多いのがかなり効いたように思う。
ドイツは前半うまくいきすぎて後半の戸惑いを修正できなかったのか。好調だったからこそ、崩れると止められないとは。
なんだかんだで前田が疲労させていたはず。ドイツは調子よく攻めて自分たちの疲労に気づいていなかったんじゃないか。
逆に日本は前半悪すぎたからこそ後半開き直れたのかもしれない。感情ではなく科学的に分析が求められる試合であろう。
大げさでなく、スポーツに限らず広く心理学の素材になる試合だと思う。それくらいの価値のあるゲームをやってのけた。
MOMはGK権田で、妥当である。日本の失点は相手をフリーにした時点でダメで、防ぎまくった権田は褒めなければいかん。
日本の1点目はシュートに詰める重要性を教えてくれるものだ。多くの選手がペナに入っていたことが本当にすばらしい。
中学生の部活を見ているときは、シュート練習で蹴ってはずしてそれで終わりにしちゃう生徒が多くて毎回怒ったのだが、
これで詰めるところまでやる習慣がつくといいし、プロでもとにかくシュートを撃ってこぼれ球を狙うようになるといい。
2点目は浅野ならではのシュートかなと思う。正直撃って入ったところが見えなくて、最初何が起きたのかわからなかった。
前に出たロングボールを収めてのシュートは2017年のオーストラリア戦でのワンタッチ(→2017.8.31)を思い出させる。
浅野の凄みはそのファーストタッチにあるのかもしれない。今回もあのトラップだけで飯が何杯も食える。いや本当に。終盤のドイツは『柔道部物語』(→2003.7.5)の最初の樋口戦で焦る樋口を見るようだった。あの痛快さ、そのまま。
いやこりゃマンガですよマンガ。『キャプテン翼』はファンタジーだけど、ついに現実で戦術で勝ってしまったからなあ。
日本は理想の戦術を現実に完遂できるだけの力がついた。そう高らかに宣言する逆転劇だった。余韻がすごい。
『装甲騎兵ボトムズ』。1983年放映開始のSFロボットアニメ。全52話を見たのでレヴューを書くのだ。
いきなりワケのわからん暴力の世界に放り込まれるSF感がすごい。80年代SF映画の濃縮された設定を感じる。
僕らはSF作品に触れると、まずその用語に圧倒されることになる。そして用語を理解する中で世界観に入っていく。
ハードボイルドを徹底しながらも謎によって視聴者を引き込む手法はけっこう大人向け。子どもも出てこないし。
キリコの性格からして乾いた感じがして、人間関係よりも作品世界の展開を優先して話が進むのが珍しい。個人的には富田耕生とか千葉繁とか銀河万丈とか緒方賢一とか玄田哲章とか二又一成とかおっさん声優全開でうれしい。
そしてフィアナがいい女。いい意味でたいへん男くさいアニメだ。助けられてばかりなのにキリコは態度がでかいなあ。
あとすごいのが、キリコが作中まったく着替えないこと。一度も着替えないことで性格を表現するってのは面白い。
ただ、想像力の持っていき方はすごいけど、めちゃくちゃ面白いというわけではない。戦っているシーンが非常に多く、
圧縮すれば2/3くらいには収まってしまうだろう。戦闘シーンが手段ではなく目的になりかけている感は否めない。
物語の最後の締め方はハードボイルドである以上、余韻を残しつつもできるだけ簡潔にするためにああなったのだろう。
そんなわけで、物語としての魅力よりもハードボイルドSFとしての魅力を研ぎ澄ませて伝説をつくったであろうアニメ。
そういう方向性のひとつの頂点、メルクマールを体験できたのはよかった。映画を参考にアニメの表現を広げた作品だ。
次回予告の名ゼリフが有名だが、その上手さで魅力が5割増となっている。この次回予告で世界観ができあがっている。
では恒例の最後の雑感。ワイズマンの声が切れ切れになっていく演出が上手い。何よりTETSUこと織田哲郎の歌が上手い。
それにしてもロッチナこそPSなんじゃないか。『太陽を盗んだ男』(→2003.11.16)の菅原文太を思い出すのであった。
体調は小康状態って感じになってきたけど異世界転生マンガでも読んでおとなしく過ごすのである。
第5弾は、理不尽な孫の手/フジカワユカ『無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜』。有名作品らしいですね。みごとにニートからのトラックにぶつかって転生、なるほどこれが元祖というか王道になるのか。
無職で転生というタイトルも直球なら、サブタイトルの異世界行ったら本気だすとか、実に正直だなあと思う。
さて肝心の内容については、転生したからそして前世の記憶があるから無条件に強いというわけではなく、
ちゃんと努力を描く。が、端折ってもいる。『鬼滅の刃』(→2020.11.13)にも通じる扱い方かなあと感じる。
このマンガに込められている欲望は、まず力を行使する大人への反感がある。一方で、子どもには謙虚さを求める。
頼れる大人を追いかけて成長したいという欲望と、ただその大人にも実は改める点があるという反省と、
大人側の改善も成長として総括する点など、かつて少年マンガに夢中になった大人の感情を的確に押さえている。
EDまで盛り込んでくるとはおっさん向けだなあ、と思う。やはり異世界モノはおっさんの欲望が根底にあるのだ。
テンポよくテコ入れする設定も印象的である。冒険モノから学園モノへの転換で延命を図るのはなかなか斬新。ヒロインは合法ロリに幼なじみにお嬢様にとよりどりみどり。腹違いの妹はハーレムへのエクスキューズだろうか。
鈍いオレかっこいい理論は少年マンガの残滓。お嬢様はヤリ逃げではなく、女が勝手に出ていっただけですから!
でも男の夢である学生結婚をしてしまう。結婚したら家族、そして家! 学園モノからホームドラマへの転生なのか。
そうして古来の価値観がぶり返すのは、おっさんどもの見果てぬ夢か、しょぼくれた現状に対する反省の現れか。
ストーリーとしては一貫性をあまり感じさせず、迷走ぶりが表に出ている。逆を言えばそれが紆余曲折のドラマとなり、
同じように現実で迷走するおっさんたちには「作者の正直さ」として映り、共感を得られているのかもしれない。明確なラスボスがどうこうというよりは、みんなが無事に集まることが当面の目標となっているのが独特である。
でも異世界それ自体が目的になりがちな傾向の中で、従来のRPGにあるような打倒ラスボス以外の目的を見つけたのは、
このマンガの優れている点だと思う。あとはダラダラと方針転換を繰り返すことなく話を収束させられればいいのだが。
最後は分離して現実に戻って、追っかけてきたロキシーとエンドだろな、見た目の若い同級生エンドだろな。どうずら?
2018年の夏休みにスタートし、のべ36日以上かかった「TOKYO SWEEP!! 23区編」が、昨日をもって無事に終了した。
正直なところ、コロナで旅行できなかったおととしと昨年に固め打ちしたからできたことである。旅行の代わりだった。
採用試験が終わったのも大きい。それで、神奈川県に引っ越すつもりで悔いなく東京をまわり尽くそうという気持ちで、
昨年の夏休みに一気にまわったというわけなのだ。残りをなんとか今年の秋にやりきって、ついに達成したのである。最初は「東京で暮らしているんだから東京について詳しくならなくちゃね」ぐらいの気軽な思いつきで始めたのだが、
いざやってみると東京の歴史の厚みにひたすら翻弄され続ける日々だった。特に特別区発足当初の15区は本当に濃かった。
大東京になってからの35区についても、できるだけ旧町役場・旧村役場を中心に合併前の各自治体を探ったため、
これまた濃かった。これから日記で各区の空気を言語化していく作業が控えていると思うと、震えが止まらない。
でもそこまでやりきらないと意味がないのである。なんとか地道にがんばりますのでよろしくお願いします。★実施リスト
#1 2018年7月~8月に継続的に実施:旧麹町区(千代田区南西部)(→2018.8.2)
#2 2018年7月~8月に継続的に実施:旧神田区(千代田区北東部)(→2018.8.6)
#3 2020年8月14日実施:中央区
#4 2020年8月17日実施:旧芝区(港区東部)(→2020.8.17)
#5 2020年8月19日実施:お台場+旧赤坂区(港区北西部)
#6 2020年8月30日実施:旧麻布区(港区南西部)
#7 2020年10月31日実施:旧四谷区(新宿区南東部)・旧牛込区(新宿区北東部)
#8 2020年11月1日実施:旧淀橋区(新宿区西部)
#9 2020年11月18日実施:文京区
#10 2020年12月26日実施:旧浅草区(台東区東部)
#11 2021年7月22日実施:旧下谷区(台東区西部)
#12 2021年7月23日実施:墨田区
#13 2021年7月24日実施:江東区
#14 2021年7月31日実施:旧品川区(品川区東部)
#15 2021年8月1日実施:旧荏原区(品川区西部)
#16 2021年8月5日実施:目黒区
#17 2021年8月10日実施:旧大森区(大田区北部)
#18 2021年8月11日実施:旧蒲田区(大田区南部)
#19 2021年8月18日実施:世田谷区その1(旧荏原郡その1)
#20 2021年8月27日実施:世田谷区その2(旧荏原郡その2)
#21 2021年8月28日実施:世田谷区その3(旧北多摩郡)
#22 2021年9月19日実施:渋谷区その1(旧千駄ヶ谷町・旧代々幡町)
#23 2021年9月20日実施:渋谷区その2(旧渋谷町)
#24 2021年10月2日実施:中野区
#25 2021年10月3日実施:杉並区
#26 2021年10月23日実施:豊島区
#27 2021年10月24日実施:北区(王子区・滝野川区)
#28 2021年10月30日実施:荒川区
#29 2021年11月13日実施:板橋区
#30 2021年11月20日実施:練馬区その1(旧大泉村・旧石神井村)
#31 2021年11月28日実施:練馬区その2(旧上練馬村・旧練馬町・旧中新井村・旧上板橋残り)
#32 2022年10月1日実施:足立区
#33 2022年10月2日実施:葛飾区
#34 2022年10月23日実施:江戸川区
#35 2022年11月3日実施:足立区と葛飾区の旧役場めぐり
#36 2022年11月19日実施:江戸川区と江東区の臨海部&宗谷
体調はごくふつうって感じになってきたけど異世界転生マンガでも読んでおとなしく過ごすのである。
第4弾は、蘇我捨恥/氷樹一世『異世界迷宮でハーレムを』。こないだアニメ化されたっけ。今のところ8巻まで出ている。これまた直球でハーレムである。そしてきちんと直球でストライクなのである。おかげでアニメが変に面白かった。
特徴は異世界のシステムを理解するのにものすごく手順を踏むこと。ファンタジー脳(能?)のない当方にしてみれば、
よけいなお世話な説明だらけでウザくてたまらない。まあでもそういうこだわりが好きな人もいるんだろうなあ。
僕の感覚だとひたすら膨大な説明ゼリフとたまにエロスの繰り返しとなるので、精神的金属疲労が甚だしい。
こんな調子でハーレムがハーレムらしくなるまでがんばるんですかね。話にもエロスにも飽きちゃうと思うんですけど。
田中隼磨が引退とのこと。本当に、本当にお疲れ様でした。
近年のスポーツ選手で、これほどまでに大きなものを背負い続けた選手はいなかったんじゃないかと思う。
ひとつは、故郷のクラブでチームリーダーとしてプレーすること。地元愛の強い街だけに、プレッシャーは計り知れない。
そしてもうひとつは、松田直樹(→2011.4.30)という偉大な選手の意志(遺志)を受け継いだことである。
死(→2011.8.5)という究極のバトンタッチ、それをまっすぐに受け止めて、全力でやりきってみせたのだ。
この2つの要素は単純な足し算どころか掛け算でもなく、べき乗、いやそれ以上の重みがあったのではないか。
もちろんそれは名誉なことでもある。とんでもない期待をかけられて、ずっと応え続けた(→2016.4.9)。
今シーズンはまだ出場がないが、40歳のシーズンまで現役を続けたことには、ただただ尊敬の気持ちしかない。
「僕はイマイチ山雅が好きではない」とかいろいろ書いてきたが(→2022.10.30)、あえて言わせていただく。
田中隼磨というサッカー選手が自分と同じ信州出身者であることを、心から誇りに思っております。
体調がほぼ元どおりになったけど異世界転生マンガでも読んでおとなしく過ごすのである。
第3弾は、月夜涙/月見隆士『史上最強オークさんの楽しい異世界ハーレムづくり』。今のところ10巻まで出ている。この作品も御多分に洩れず、何をやっても万能な主人公の爽快感、その延長線上にあるハーレムということで、
おっさんの欲望にしっかり忠実な異世界ものである。特徴的なところとしては、ギャグを物語のベースにしている点か。
ミニ四駆など明らかにおっさん向けなギャグを臆面もなくできる、その開き直りっぷりが素敵である。
あとはスイーツですかな。女の子だけじゃなくておっさんだって甘い物は好きだからしょうがないのだ。
でも転生要素は弱い。忘れた頃にそういえば前世ではって感じでご都合主義をぶっこんでくる印象は否めない。
正直、これは異世界転生という括りでなくてもいいような気がする。あえて異世界転生のフォーマットに乗せている感じ。
しかし、それでは異世界という前提がなくても成り立つ話なのかというと、やっぱり難しいのである。
様式が確立されているからどうにかなっている感触。消費されるものとしての覚悟ができているのは強みなのか。
だいぶ体調が戻りつつあるけど異世界マンガでも読んでおとなしく過ごすのである。
第2弾は、えぞぎんぎつね/阿倍野ちゃこ『ここは俺に任せて先に行けと言ってから10年がたったら伝説になっていた。』。
こないだ10巻が出たばかりですかな。とりあえずそこまで読んでみたので、ざっと感想をば。おっさんの欲望に非常に忠実な異世界ものであると思う。いや、もう、これは本当にわかりやすい。
(逆を言うと、おっさんである私も正直なところ惹かれる点があったわけで、それを列挙すればいいわけだ。)
まず若返り。仲間たちはそのままで自分だけ若返り。おっさんは関係を維持したまま新たな青春をやり直したいのだ。
仲間たちはしっかり出世していて頼もしい。そしてそんな仲間たちに一生ものの貸しがあるからやりたい放題できる。
自分は研究に没頭して女っ気なくて、でも研究のおかげで最強レヴェルの実力を持っている。実力を肯定されたいのだ。
もふもふ。犬でもいい。猫でもいい。面倒みるのは嫌だ。でもペットを飼いたい。そんな欲望がありありと透けて見える。
豪邸に住みたいわけではないが、一緒に暮らす仲間がいるからしょうがない。仲間の誰かが家事をしっかりやってくれる。
慕ってくれる女の子は複数いるもんね。友達の娘はちょっと立場的に微妙だけど、向こうが好きならしょうがないよね!
とりあえずざっとこんなところですかな。おっさんの欲望を煮詰めてできていて、清々しいったらありゃしない。
これをとっても読みやすい絵柄でやってくれるのである。魔法がたいへん『BASTARD!!』なオマケつきである。しかしながらメガネっ娘とくっつきそうなのでダメなのだ(→2022.3.8)。メガネなんてファルスじゃ、ファルス。
放課後に地震が発生。やけにゆったりとした揺れが長く続いて非常に変な感じなのであった。
震源地が三重県沖であるということでびっくり。そして各地の震度を確認してみたら、揺れたのは見事に東日本のみ。
これが異常震域か!と大いに驚いたのであった。結局、震源が非常に深く沈み込む太平洋プレートだったため、
マントルを経由した直上よりも、同じプレートを伝った先にある東日本の方が揺れたという話。地球すげえな!
月イチのサッカー観戦、2022年の最後を飾るのは相模原×いわき。相模原は最下位、いわきはJ3優勝を決めている。
いわきは今シーズンJFLから昇格したばかりだというのに優勝。長野と松本は何をやっとるんじゃ、と思う反面、
アンダーアーマーの会社(ドーム)が本気で取り組んでいる凄みを見せつけられてぐうの音も出ません、はい。
で、そのいわきのサッカーをぜひこの目で見ておこうというわけなのだ。午前中にまるまる部活当番をやってから、
昼にラーショを食って(→2022.9.4)、相模大野へ。スタジアムに着いたら試合開始15分前で、相模原は遠かった。
席に座ると、戻ってきたばかりのデジカメを構えて準備万端。久々のデジカメが重いのは体調がまだ万全でないからか。さて試合開始。メインスタンドはさほどでもなかったが、上空は風がだいぶあって風下の相模原はだいぶ戻される。
そこにフィジカル全開のいわきが襲いかかる。とにかく相手よりも先にボールに触ろうとするプレーが特徴的で、
デュエルをまったく嫌がらない。いわきはドームの持つノウハウを駆使してフィジカルを鍛えているという話だが、
選手全員が自信を持っていることが大きいと思う。それでいて非常にクリーン。本当にきれいにボールを奪うのだ。 足元へのパスよりは、味方を信じてスペースに落とすパスが目立つ。なるほど攻撃でも守備でも相手より前に入り、
フィジカルの強さを生かして「その場所」を占有する。それをチーム全体で連続させて優位な局面をつくるサッカーだ。
ボールを握るためにどの空間を押さえるかという、陣取り合戦としてのサッカーをやっている。考え方が面白い。
L: 序盤から激しく相模原ゴールに迫るいわきの攻撃陣。 C: フィジカルを武器にしたパスワークで戦う印象。
R: いわきの先制シーン。ハーフタイムが見えてきた38分、右サイドからのクロスに有田がヘッドで合わせた。相模原はすでに16名の選手の契約満了・引退を発表しており、この日のスタメンのうちなんと11名中8名が退団する。
来シーズンからはDeNAが親会社になるということで大改革が行われるわけだが、それにしてもこれはなかなかすごい。
選手たちはなんとしてもいいところを見せたいだろうが、いわきは余裕を持って攻めていて苦しい展開が続く。
そして38分、いわきが先制。僕はアウェイ寄りのメインスタンドにいたが、周りのいわきサポが一斉に歓声をあげた。
首都圏でのアウェイゲームなのに、多くのサポーターがいて驚いた。やっぱり優勝するチームは応援したくなるのね。
L: いわきのゴール裏。J3のアウェイゲームにしてはサポーターが多い。福島から来たのか、在京サポが多いのか。
C: いわきのマスコットキャラクター・ハーマー&ドリー。上に乗っているのがハーマーで、下の本体っぽいのがドリー。
R: ゴール裏の前に陣取って応援するシーンも。一平くんほどではないが(→2016.3.26)、なかなかがんばりますな。後半はいわきがしっかり風下だが、攻撃の手を緩めない。53分に吉田のミドルが相模原ゴールにきれいに突き刺さる。
スペースに落としてシュート、といういわきの攻撃が最大限に効いた格好か。まさに王者の貫禄を見せつける追加点だ。
73分にはGKへのバックパスからペナルティエリア内の間接FKという珍プレー。中学生だとわりとよく見るミスだが、
プロで発生するのは珍しい(見たのは2回目ぐらいな気がする)。このピンチをいわきはしっかりとしのいでみせる。
L: いわきの追加点のシーン。SB吉田がペナルティエリア外から狙いすましたゴール。いやあ、いわきは隙がない。
C: プロでは珍しいペナルティエリア内の間接FK。船山が蹴り込むが、いわきはこのピンチをしのぎきってみせた。
R: 攻める相模原に対応するいわき。積極的に奪いに来るので相模原は余裕を持ってプレーするのが難しい。しかし終了間際の89分、相模原のクリアボールに対し、前に出ていたいわきGKがうまく処理しきれず、
後手にまわったところを猛追したFW野澤にかっさらわれて失点。先ほどのバックパスといいこのシーンといい、
いわきの守備陣は前に出るGKとの間でイマイチ連携がとれていないところがあり、そのツケを払わされた格好だ。
同点に追いつくチャンスができて相模原サイドは俄然盛り上がるが、いわきがなんとかリードしたままゲームを閉じた。
L: 守備陣の連携ミスを衝いて相模原が1点を取り返す。さっきのFKの反省が生かされていないがゆえの失点だよな。
C: 終盤の攻防。相模原は同点に追いつくチャンスができたことで必死だが、いわきが体を張って守りきった。
R: スコアボード。いわきのエンブレムのおかげで、地域代理戦争っぽさが強調されている気がする。面白いなあ。バスが20分に1本ということで、少し急いで女子美術大学前のバス停へ。素早く動いたおかげでスムーズに乗車できたが、
行列は長く延びて車内は満員。雨が降りはじめた中、途中のバス停で客を乗せられずに終点の相模大野駅まで行った。
これは運営サイドの良識を疑う事態である。前に観戦したときには臨時のバスを出していたと思うのだが……。
そもそも女子美術大学前のバス停からスタジアムまで微妙な距離がある。試合の日には直行便を出してもらいたい。
DeNAの新体制がまず改革すべきはそこだろう。サッカー観戦者以外にネガティヴな感情を抱かせない工夫が必要だ。◇
さて、この日はJ1参入プレーオフ決定戦が行われ、大木さん率いるJ2熊本(→2022.6.12)はJ1京都に敗れてしまった。
相変わらず大木さんのサッカーは熊本でも評判がよくて(フォーメーションは3-3-1-3だそうじゃないか →2022.10.30)、
この試合でもかなり熱いプレーが展開されたという。それだけに、このチャンスをモノにできなかったのは本当に残念だ。
なんとか主力選手が多く残留して、来シーズンはさらに洗練されたサッカーを見られるといいのだが。期待しています。
体調がイマイチなときは異世界転生マンガでも読んでおとなしく過ごすのである。
前に書いたように、異世界ブームの社会学的分析が楽しくなってきたので(→2022.3.6)、研究の一環ってことで。
まず第1弾は、伏瀬/川上泰樹『転生したらスライムだった件』。異世界ものではいちばん評価が高いのかな?
そういう認識で読んでみた。今のところ21巻まで出ていて、そこまでの感想を気ままに書き連ねてみる。僕はファンタジー脳(能?)が欠如しているので、論理的な展開が正しいのかよくわからない。
それでもスイスイとテンポよく読み進められるのは、ストーリーテリングがよくできているということなのだろう。
この作品の最大の特徴は、スライムに転生することで主人公がなんでもありになるというロジックを成立させつつ、
通常なら狩られるだけの存在でしかないモンスターたちを成長させ、うまく仲間として取り込んでいる点である。
いや正確に言うと仲間ではない。部下である。有能な部下を自由に使う喜びは、シミュレーションゲームの要素だ。
だからこの作品についてはRPGよりもSLGのノウハウが大きく作用している。『信長の野望』あるいは『SIM CITY』。
戦闘と政治(外交・街づくり)がバランスよく配合され、ただ壊すだけの話にはなっていない心地よさがある。
しかし主人公の力によって力を得たモンスターはより人間に近い姿になるとは、なんともうまいことを考えたものだ。
そうして思い入れを持つことが可能になる部下たちが主人公に忠誠を誓って活躍する(もちろん最強なのは主人公だが)。
(ただし牙狼族だけは犬の姿のままで、もふもふ成分をきちんと担保している。これもまた巧妙なところだ。)
こうなるとモンスターの種族はキャラクターの個性に回収される。種族の個性と個人の個性でヴァラエティを強化する。
でもみんな似たような名前ばっかりで、誰が誰だか正直よくわからない。ネーミングセンスはかなりひどいのでは。
こうしてみると、絶妙な韻を取り入れるなどガンダムの富野氏のセンスはぶっちぎりなんだなあとあらためて感じる。さて、序盤では個性ある種族たちのキャラクターを利用してハーレムに振る方向性もなくはなかったと思う。
しかしシズさんの件を解決したところでそれを完全に断ち切った。幅広く支持を得るため女性の視線を意識したのか。
男性部下については嫌味のないイケメンという路線を的確に実現しており、いい意味で性差を乗り越えた感がある。
性別のないスライムと少女の姿(フロイト的にはどうなんだろう)で、物語全体の性の匂いをうまく消しており、
すべてを個性に回収したうえで読み手を話の流れに集中させる。このバランス感覚は特筆すべきものだろう。これはこの作品に限ったことではないのだろうが、スキルという概念はどう考えるべきなのだろうか。
主人公は転生した「捕食者」のスライムということで、この設定がなんでもありが実現される根拠となっているが、
そもそもが能力を「スキル」という可視化されたものとして捉える視点が非常に現代的ではないかと思うのである。
というのも、現実において能力は外から見えるものでもないし、範囲だって曖昧である。本来は相対的なものだろう。
しかし異世界の「スキル」は絶対的なものとしてパッケージングされており、ゼロサムで機能する/しない。
能力はいわばアプリとしてインストール・アップデートされるものと見なされている。この能力観がたぶん現代的で、
現代っ子はゼロサムで「できる/できない」を捉えているのではないか。人間の能力がデジタル的な感覚になっている。
このデジタル的な能力を統括するものとしてシステム(=主人公を助けてくれる大賢者)を想定するなら、
それは新たな宗教の誕生と言えるかもしれない。ゲームはわれわれに何をフィードバックするのか(→2005.8.3)。ストーリー展開から現代人の欲望を読むとすると、この作品には「教師になりたい」という思いが込められているのか。
誰しも学校に通って成長するわけで、理想の教師像が存在するのが近代の特徴ということになるのかもしれない。
あと感じたことは、現代メシの肯定。異世界の面々が現代のメシに感動するシーンは、現実の生活の肯定を意味する。
異世界という、ある意味で現実の否定を根拠とする物語の中で、メシだけは肯定される。これ、けっこう深いと思う。
マサカリ投法でおなじみの村田兆治がこのような形で亡くなるとは……。
僕がプロ野球に本格的に興味を持ったときにはすでに引退していたが、表に出てくるたびに豪速球を投げていて、
レジェンドのとんでもなさを身を以て示してくれていた存在だった。彼のニュース記事を本当に楽しみにしていたのだ。
それだけにエピソードは常人離れした根性を伝えるものばかりで、そのリミッターのはずれっぷりには呆れるしかなく、
自他共に厳しくて妥協が一切ないからこそのレジェンドだよなあ……と感心させられたものである。
今はまだどうしても悲しい気持ちばかりが先行してしまうが、あのとんでもない豪速球の記憶とともに、
とんでもない根性こそがそれを支えていたという事実をずっと覚えておきたい。さすがに真似はできないけど。
『超時空要塞マクロス』を見てみた。1982年の作品だそうで、名前だけは聞いたことがある、という状態なのであった。
続編がいろいろあるし、戦闘機なのかロボットなのかアイドルなのかわからんし、つかみどころのないイメージである。
そんなわけで予備知識ゼロで見てみたら、「これがナデシコ(→2016.3.16)の元ネタだったのか!」となった。シリーズ化されているから人気があるはずで、いいところがあるはずだ、とがんばって見たけどつらかった。
いやあ、つまらんつまらん。ストーリーテリングが下手でもう。話がきれいな線形で進まず、あちこち曲がる感じ。
結局は、かっこいい飛行機! かわいいアイドル! 飛行機はロボットに変形するぜ!といういいとこ取りをやるけど、
それらの設定をまるで消化しきれていないのである。おたくの好きなものを盛り込むけどまとまらないまま終了。
惜しいっちゃ惜しいのだ。敵との対立と和解、鍵になる「文化」。これについては異論はない。しっかりSFである。
しかし「文化」にアイドルをもってきて、敵がスルッと納得してしまうのがどうにも。感動のプロセスが雑なのだ。
おそらくおたくであれば論理的につながるのだろうが、つながらない人の方が多いはずで、説明不足を感じる。何よりいちばんの原因はキャラクターの魅力不足、心理の掘り下げが足りないことにある。まず主人公がクズで、
ミンメイもクズに振り回され、イライラが募るばかりである。魅力のない男で三角関係を展開されても説得力がない。
ゼントラーディの皆さんも地球の文化に惹かれる役どころだから、その心境と立場の変化をしっかり描くことが、
文化の力を再確認させることになる。でもその努力は「アイドル! はい終わり!」という程度しかなされない。とにかく、すべてにおいて中途半端な作品。正直、いろいろシリーズ化されたのが理解できないくらいつまらん。
今週はすさまじく体調が悪く、疲労感と倦怠感がものすごい。連日の各種カレーでどうにかしのいでいる感じである。
ここ2ヶ月の平日はずっと、朝はおにぎり2個、昼は野菜、夜は薬味たっぷり茶漬けでほぼ固定化されているから、
そりゃまあエネルギー不足にもなるってもんだろう。雑な食生活で急激な寒暖差についていけなくなったか。
文庫本を重く感じるというのはさすがに自分でもショックだった。早くいつもの調子に戻したい。
家に帰る途中、あちこちでスマホ片手に空を見上げる人を見かける。今日は皆既月食なのだ。
天王星の食も同時だそうで、このパターンは442年ぶりのことだそうだ。まあどうせ天王星食は見えないが。
僕も家からデジカメとスマホで撮影を試みるが、やっぱり貧弱な装備ではどうにもならず、諦めた。
どんなにがんばって撮っても腐りかけの卵の黄身にしか見えないのである。どうしょうもない。さて、Twitterなどでは「『今日は皆既日食だ』って言ってる人、月に住んでるのがバレるぞ」というツッコミがあり、
そういう反応が瞬時にできる知性が欲しいなあと感心するのであった。こういうところに滲み出る賢さがかっこいい。
『生徒会役員共』『生徒会役員共*』のアニメを見たので感想を。原作は氏家ト全のマンガで、全22巻という人気ぶり。
前に『女子大生家庭教師濱中アイ』についてはレヴューを書いたが(→2007.4.9)、やっていることはほぼ同じであり、
長々と22巻までやる内容かよ、と呆れつつ視聴する。主人公の髪型がたいへん気持ち悪く、早く床屋行けと念じてしまう。序盤はこれでもかと展開される下ネタでウンザリする。氏家ト全だからわかっていたけど、しっかりアニメ化されている。
元が4コママンガということで、たいへんテンポがいい。ゆえにかなりのハイペースで下ネタが投げつけられ、
30分アニメの密度で来られるとキツいなあ……と思うのであった。まあこれだけ下ネタを思いつくのは特殊な能力で、
キャラクターの特性を生かしながら下ネタを生産し続けるのは驚異的である。マンネリというよりは様式化という感じ。しかし慣れてくると、不思議とツッコミのリズムがものすごく心地よく感じられるようになる。これには驚いた。
スタッフも声優陣もリズムがつかめてきたようで、猛烈な密度で下ネタが連発されるのはまったく変わらないのだが、
むしろツッコミを堪能するアニメへと変貌を遂げるのである。もはや下ネタはツッコミを引き出すための素材にすぎず、
阿吽のリズムで入るツッコミを聞いて満足感を得る、そういうアニメへと変化する。原作は22巻まで行ったわけだが、
その秘訣をしっかりと再現したアニメということだろう。ツッコミはやがて、はっきりと快感にまで至ってしまう。
いや、もう、まいりましたとしか言いようがない。ツッコミの愉悦をここまで味わえるアニメは初めてだ……。あともうひとつ、畑ランコのボケっぷりもクセになる。演じるのは新井里美(→2016.3.27/2022.4.3)ということで、
これまたさすが。原作を読んでいないけど、間違いなく原作を超えているよね。新井さんを堪能するアニメでもあるな。
昨日に引き続いて山中貞雄監督作品、『河内山宗俊』。こちらは1936年の公開。
『丹下左膳余話 百萬両の壺』が本来ニヒルなヒーローをコメディの主人公に仕立て上げた作品であるのに対し、
こちらの河内山宗俊はとことんダークヒーロー。男の友情や男女のすれ違いを通して西部劇のような哀しみを描きだす。
とはいえ宗俊と市之丞の飲んだくれぶりをはじめとしてオーヴァーなギャグもしっかりと効いており、
コメディを得意とする監督が「ダークなものもこれだけできますよ」と示した作品であると思う。
単純な構図でいうと、無法者2人とヒロインで、後の『明日に向って撃て!』(→2005.7.4)に近いものがある。
うーん、ドリカム編成(死語)。そのヒロインを演じているのは当時15歳だったという原節子。いろいろ伝説的な作品だ。山中監督は「モダン」「現代的」というキーワードで語られるが、確かに明らかに現代人の感覚を持っている。
セリフが典型的だが、古さを感じさせないのである。右から左に横書きする時代なのに、しゃべっている言葉は左から右、
そういう不思議さがある。当時も実はふだんしゃべっている日本語は今とあまり変わっていなかったのか。考えてしまう。
また、『河内山宗俊』もいい意味で展開が読めない。興味を惹くだけのくだらないサスペンス的な伏線はなく、
希望と危機の間で揺れながらダークヒーローとしての本分を全うするストーリー。それだけに最後の殺陣の迫力がいい。
監督最大の特徴である観客へのわかりやすい映像の提示能力が存分に発揮され、没入感をしっかり味わうことができる。
われわれは一人称で生きている以上、「いま何が起こっているか」を映像で第三者に対して客観的に示すのは、
本質的な難しさがあるはずだ(→2021.7.30)。しかし山中監督はそれを本当に簡単にやってのける(ように見える)のだ。惜しいのは、現存するフィルムの性質のせいか、音声が聞き取りづらいこと。映像が異様にわかりやすい分、
よけいにそう思えてしまうのかもしれない。思いきって、実力ある声優による吹き替えという選択肢があっても、
それは作品に対する敬意を失うことにはならないと僕は考えるが、いかがだろうか。もっとストーリーを味わいたい。もし山中監督が戦争で亡くなることがなく、戦後も存命で作品を撮り続けたら、と考えてしまうのは仕方ないことだ。
われわれはどこかオーパーツ感覚で山中監督作品を見ることになるが、当時の観客の感覚だとどうだったのかも気になる。
映画の作品だけでなく、そこから付随していろいろ考えさせられる。そこに山中貞雄という人の偉大さがあるのだろう。
日活創立110周年で山中貞雄監督作品を上映するということで見てきた。本日は『丹下左膳余話 百萬両の壺』のレヴュー。
1935年の公開ということは、今から87年前の作品である。「1935年」というとそれほど大昔には思えないが、
「87年前」というと1世紀マイナスいくらかという感覚になり、恐竜→サムライ→100年前といった歴史の厚みを見る。
それをしっかり引き受けて作品を論じるのは、果たしてフェアなことなのだろうか。時間を過度に強調していないか。
そんなことを考えてしまうほどに現代的な作品だった。われわれは「モダン」という言葉で時間の橋渡しを形容するが、
山中監督の感性をその一言でまとめてしまうのは軽率である気がする。87年前の作品でも現代的と感じるのであれば、
それは時代を超えて絶対的なのである。だから山中貞雄は絶対的で王道な映画表現を確立した人、それが正しいと思う。
管見では、山田洋次(→2003.10.27/2012.10.15)が彼に近いと感じる。どんな観客にも明快にわからせる能力が凄い。印象的だった点を列挙していく。まずはキャラクターに対する優しさだ。みんなが憎めない面を持っており、
現代風に言えばツンデレである。そしてこれに観客が今のコントと同じ感覚で爆笑してしまうんだからたまらない。
また、モンティ・パイソンのガス台スケッチ(第2シリーズ第1話)みたいな、量によるギャグの表現も得意とする。
山中監督は「こう描けば観客はこうわかってくれる」という感覚が優れていて、ギャグの面白さを共有する感覚になる。
カット割り(トークショウでのローポジションのカメラで背景を収める話に納得)も自然で、見ていて制約を感じない。
観客にとって適切なテンポで話が進むうえに、ガジェットの上手さがまたオシャレ。すべてにおいて気が利いているのだ。肝心のストーリーも冷静に考えると実はすごくて、展開がまったく読めないのである。
100万両の価値がある壺をめぐる話ということで、ふつうならそこを中心に引っ張る下品なサスペンスに陥りがちだ。
しかし山中監督は、観客の予測を裏切ることを目的としない。中心は壺にはなく、ドタバタを展開する人間の方にある。
キャラクターに対する優しさとはそういうことで、壺はあくまでホームコメディのきっかけ。欲に振り回される人間を、
笑いを交えて肯定的に描く。話の落としどころとしては、壺が失われて日常の幸せを結論づけるのが最も標準的であろう。
ところが山中監督はその上を行くのである。そしてこの終わらせ方こそ、山中監督の優しさの本質を示している。
でも実はこの作品、話じたいは主人公が丹下左膳でなくても成立する。原作者・林不忘の抗議で「余話」になったという。
それまでのニヒルな丹下左膳像からかけ離れているにもかかわらず、完成度の高さから危機感を持ったのもわかる。
原作者としては「これが丹下左膳か」と思われたらたまったもんじゃないだろう。でもそれくらいに強い魅力がある。さて、ロシアがウクライナに攻め込み、北朝鮮がミサイルをぶっ放しまくっている昨今。戦争の悲劇は今も続いている。
この映画を見せて、「でもこの監督、戦争に行って28歳で亡くなったんだぜ」「現存する彼の映画は3本しかないんだぜ」
と言うのがいちばんの抑止力になるんじゃないか。とことんまで優しい映画なだけに、悲しくて悔しくてたまらない。
鈴木清順監督作品、『殺しの烙印』。日本におけるカルトムーヴィーの傑作とのこと。
宍戸錠がランキング第3位の殺し屋・花田を演じるピカレスクな作品。でもハードボイルドと言うにはコミカルかな。デジタル復元版なので、とにかく映像がきれい。1960年代(1967年)という時代の記録として大いに興奮させられる。
高度経済成長を背景に、豊かさの象徴としてアメリカ的なものがモダニズムのデザインをもって押し寄せる。
その波は戦前の1920年代にも存在していたが、戦争を挟んでより大衆に近いものとして身近なものにまで波及した。
この大衆化はさらに進んでいくことになるが、1960年代にはまだそこに「高級感」を求める気持ちが残っていた。
ヒロイン・美沙子にその辺りの価値観がしっかり背負わされていて、これが今でも魅力的に感じられるのが面白い。さて、作品じたいについて。印象的なカットのつくり方は確かにキレッキレ。どれだけ斬新なカットを詰め込めるか、
という点に監督最大の興味があったんじゃないか。そういう新たな発見を提示する機会としてのハードボイルド設定か。
『シャイニング』(→2020.4.17)や『AKIRA』(→2021.2.27)が印象的なカットの元ネタ集であるのと同じ匂いがする。
上述の1960年代の感性と相俟って効いているシーンは非常に多いのだが、ストーリーとの噛み合わなさもまたすごい。
それは歌舞伎的(→2008.1.13)な日本の感性なのかもしれないが、ストーリーの合間の部分を容赦なく飛ばすのだ。
監督にとって興味のない「つなぎ」としてきわめて軽く扱ってしまい、その分だけ印象的なカットづくりに腐心する。しかしやはり、その優先順位は映画の完成度を落とす結果になっていると思う。骨組みと肉付けのバランスが悪い。
この映画は性と暴力をモチーフとしているわけだが、本来はそれらが出てくる必然性をストーリーが担保するはずである。
でもその努力は放棄されており、「殺し屋の話だから」というハードボイルド設定だけで押し切ろうとしているのだ。
たとえばパロマのガス釜でメシの炊ける匂いに宍戸錠が恍惚とするシーンが何度かある。それ自体はたいへんよい。
でもそこに殺し屋に至る過去、あるいは家庭への憧憬がないからダメなのだ。記号だけで構成できるほど物語は甘くない。
せっかくの印象的なカットも、わざわざそうするだけの意味を感じさせるストーリーになっていないので空振り気味だ。
そもそもが殺し屋のランキングという設定もあまり効いていない。ランクづけする組織への反抗がなきゃダメでしょう。
“表出”しているけど“表現”になりきっていないのである(→2012.3.6/2013.9.5)。手段が目的になってしまっている。
どうにか好意的に解釈すれば、客観的な状況と主観的な感覚の区別がなくなっている点が斬新、と言えるかもしれないが。
(参考までに、鈴木清順監督の前作となる『けんかえれじい』のレヴューを貼っておく。→2005.11.25)まあ、そりゃ、クビになるでしょ。
週末と絡まない祝日はずいぶん久しぶりな気がする。絶好の秋晴れということで、やることといったらこれ。
L: 首都高速6号三郷線の下、今日も元気に東京脱出である。 R: クローズアップ!先月の足立区(→2022.10.1)・葛飾区(→2022.10.2)を走った際に旧役場を押さえることをすっかり忘れていたので、
その分の役場跡地めぐりを今日やったのであった。メインのデジカメが修理中なので先代の主力デジカメを使用。
しかしレンズの謎の汚れがわりとひどく、野外で建物を撮影するのがかなり難しかった。どげんかせんといかん……。ひととおり撮影を終えて隅田川を渡る(汐入公園)。疲れた疲れた。
足立区は広い分だけしっかり時間を食ったが、葛飾区はテンポよくまわれて多少余裕を持って帰ることができた。
今日は午後に映画を見る予定なので、時間との戦いが地味につらかったのだ。秋葉原でメシ食って銀座へ。
L: 松屋浅草。 C: 雷門は大混雑。コロナなんてどこ吹く風ですな。 R: 銀座に到着。こちらも大賑わいである。映画のレヴューはまた後日。周辺のアンテナショップでいろいろ買い込んで帰る途中、警察の自転車取り締まりに遭う。
正直言って、警察は「歩行者の安全のため」という法律の目的を忘れて、自転車の規制という手段に囚われていないか。
こちとら歩行者・自動車を邪魔しない運転を論理的にやっているのに、法律を恣意的に運用されるのは気分が悪い。
自転車OKの歩道で歩きスマホしてるバカを注意するなど、自転車に圧力をかけるよりも先にやるべきことがあるだろう。
久しぶりにスタ丼を食ったら730円。1スタドンがついに700円台を突破してしまった。円安の進行は恐ろしい勢いである。
前にも書いたが、武蔵溝ノ口駅の改札向かいにある期間限定ショップがたいへん危険である(→2022.5.17)。
今週はなんと、キン肉マングッズ。女房を質に入れてでも行かなければ!というわけで吸い込まれた(ブラックホール)。
売り場は大雑把に、左半分がアパレルで右半分がフィギュア、中央に雑貨といった感じか。両サイドの勢いがすごい。
アパレルではTシャツの種類がとにかく豊富。わりとマイナー気味な超人までしっかり押さえてあるのがうれしい。
そしてデザインがどれも凝っている。この手のシャツにしては、デキが非常にいいのである。これには正直驚いた。
ただ、「おっ、これは!」というものはことごとくLサイズが売切になってしまっていて、かなり残念なのであった。
ブロッケンJr.の「さらば超人ボディTシャツ」1枚だけ買って脱出(ホワイトホール)。いやあ、なかなかの魔境だった。