diary 2023.1.

diary 2023.2.


2023.1.30 (Mon.)

ハナツカシオリ『焼いてるふたり』。正月の電子書籍試し読み(→2023.1.3)で気になったので既刊9巻を読破。
先に結婚しちゃって後から距離を詰めていくタイプのラブコメである。嫁がクーデレで実にしぶりん。

浜松を舞台に肉を焼きながらイチャイチャするのであった。基本争いごとのない世界で料理の魅力を提示しつつ、
料理できる男子の懐の深さで勝負。失敗したときの次善の策をさらっと出すあたり、たいへんイケメンだと思うの。
対する嫁さんはクーデレで、話としてはたいへん穏やか。まあ焼いて食って喜んでりゃそれでいいわけですからね、
安心感優先のラブコメとしてはいい材料を見つけたものだと感心する。キャンプほど気負わないのもポイントか。
身近なところでの知識を提供しながら邪魔されることのないラブコメが展開される。いいんじゃないんでしょうか。
個人的には、食わせる相手がいないと料理は上達せんからどうだろう、と思わなくもないが。これは個人差あるもんな。
(そういえばずっと前に燻製やったなあ(→2001.8.162001.11.302001.12.1)。これトシユキさんの方向性だよなあ。)
読んでいてずっと既視感を抱えていたのだが、途中で「ああこれBE-PALだ!」と気がついた。これBE-PALのマンガですよ。

このマンガ、サザエさん時空で延々と続けることができますな。で、子ども生まれてハッピーエンドと。
「焼いてるふたり」じゃなくなるからね。そんな具合にとことんまでやればいいんじゃないでしょうか。

女友達から彼女になることはないよ……少なくともオレはないよ……。


2023.1.29 (Sun.)

根津美術館『遊びの美』。根津美術館は東武グループ・根津嘉一郎のコレクションをもとにした美術館で、
以前からずっと行ってみたいと思っていたのだ。自転車で港区を攻めたときにはコロナの影響で閉館中(→2020.8.19)。
気づけばそこからズルズルと3年近く経ってしまっていた。天気もいいし、意を決していざ突撃してみたしだい。

  
L: 根津美術館。現在の建物は隈研吾の設計で2009年に竣工。  C: まあいかにも隈っぽいなと。  R: 抜けてエントランス。

お昼だったので写真を撮るにはちょうどよかろうと、先に庭園を歩きまわる。港区らしい起伏を活用しているが、
正直「汚らしい」という印象である。冬は庭園鑑賞に向かない季節とはいえ、緑の管理が甘く、通路の石組みも雑。
回遊式庭園となっているが、どこから何をどう見せたいのか、意図がまったく感じられない。肝心の水も汚れている。
どこかの街はずれの公園と変わらない最低レヴェルの庭だった。根津嘉一郎の業績に泥を塗って恥ずかしくないのか。

  
L: 本館から庭園方面へ。右手にはカフェ。  C: 進んだところで本館を振り返る。  R: 庭園に入って本館。見えん。

  
L: 庭園の本格的な入口。この辺りはまだいいが。  C: なるべく見てくれのよい写真を選んでおります。  R: 通路。

  
L: 庭園内には石仏・石塔・石灯籠が配置されているが、ただ集めてあるだけ、置いてあるだけ、という印象である。
C: 池越しに眺める弘仁亭・無事庵。まとまらない景色だなあ。  R: 近づいてみる。建物をうまく見せる気もないのか。

  
L: 池。氷が張っていた。周りが汚いのがもったいない。  C: 船を浮かべただけ、では。  R: 面白みのない通路。公園か。

大いにがっくりしながら本館に戻る。展示室はぜんぶで6つあり、配置が少しややこしい(展示室3を見逃しかけた)。
企画展『遊びの美』は展示室1と2で、ホール・展示室3・地階が天部像中心の仏教美術。展示室4・5・6は2階に並び、
展示室4が古代中国の青銅器、展示室5が山水図、展示室6がお茶関係。途中のケースには宝飾時計だが、これはイマイチ。

  
L: 1階ホール。根津美術館が得意としている仏教美術が並んでいる。6世紀や8世紀の中国の石仏がメイン。
C: 十一面観音菩薩立像龕。精密でよくできていると思ったら国指定重要文化財だった。  R: 裏を見ずにはいられない。

『遊びの美』は正月ということで設定されたテーマ。有名な作品を借りてアラカルトにするような展示ではなく、
テーマを優先させて所蔵する作品を見せている。戦前からの歴史を持つ根津美術館の実力を大いに感じさせる。
平安時代は物合など貴族の遊び、鎌倉・室町は犬追物など武士の嗜み、江戸時代は寺社参詣など傾向の違いが興味深い。
個人的に面白かったのは平安時代の歌合で、「西行ちょっとメモって」「はいよスラスラ」みたいな世界が透けて見える。
白熱した戦いから生まれた和歌のデキがよかったから掛軸にしてみました、なんてポップな心境がうかがえて楽しい。
伊勢参宮図屏風も伊勢神宮(→2007.2.102012.3.312019.5.1)のあの辺りが昔はこんなだったのか、とよくわかる。

 中2階にある初代根津嘉一郎の像。アール・デコ(→2016.10.31)全開の装飾が最高だぜ。

2階はやはり展示室4が面白い。殷や周の青銅器がゴロゴロしている光景は、時間の感覚がおかしくなる凄さだ。
昨日もさんざん見たのだが、どれも状態がよくて飽きることがない。羊の角と雷文を組み合わせる豊かな想像力、
それを平行四辺形で立体的に処理するセンス。現代からは想像のつかないデザインに囲まれた世界が確かに存在したのだ。
「饕餮文卣」とか「饕餮文斝」とか「饕餮文瓿」とか「饕餮文方罍」とか、ここでしか見ない漢字がまた感覚を揺さぶる。
そういえば受付でもらう観覧券(と売店のシール)は双羊尊(2匹の羊が背中合わせに合体した器)がデザインされており、
殷や周の青銅器は根津美術館を代表するコレクション、という扱いであるわけだ。それが納得できる質と量である。
展示室5の山水図も空隙に時間と物語がしっかり詰まった作品が並ぶ。拙宗等揚(後に「雪舟等楊」と改名)の作品も、
特別扱いされることなくいい意味で周囲に溶け込んでいるのがいい。庭園はダメだったけど収蔵品は確かにすばらしい。

いずれ尾形光琳の燕子花図が展示される機会があるだろうから、そのときにぜひまた来ようと思うのであった。


2023.1.28 (Sat.)

上野の森美術館で開催中の『兵馬俑と古代中国 ~秦漢文明の遺産~』に行ってきた。入館料がなんと2100円で、
「高いなあ……中国しっかり取りやがるなあ……これもこないだの円安の影響かなあ……」なんて思っていたのだが、
おそらくこれは1階の展示(=本物の兵馬俑)が写真撮り放題ということでの価格設定ではないか、ということで納得。
そういえば、去年の10月に京都で見たアンディ=ウォーホルもそんな感じだったなあと思う(→2022.10.11)。
少しお高めの値段設定をしつつ撮影OKというのは、今後の流れになるのかもしれない。個人的にはうれしい。

展示は3部構成で、2階「I 統一前夜の秦」→「III 漢王朝の繁栄」→1階「II 統一王朝の誕生」という変則的な順路。
まずは西周(にしあまねではない。周は殷を倒した王朝で、もはや『封神演義』(→2008.4.9)の世界)の青銅器、
また春秋・戦国時代(東周)の秦の青銅器やら陶器やらが登場。紀元前11世紀から前3世紀の話で、想像がつかない。
秦の始皇帝が統一を果たしたのは紀元前221年(前3世紀)である。秦は15年で滅ぶが、劉邦の漢がそれに続く。
掘ればそういった時代の物がきちんと出てくるんだから、やっぱり中国はすごい。日本は空白の4世紀が痛いよなあ。
目立っていたのが雷文、いわゆる渦巻き模様である。当時の金属の加工技術をめいっぱい駆使して彫られており、
古代ギリシアの雷文、シルクロードの唐草、さらにはアイヌのモレウ(→2013.7.23)にも通じる要素を感じる。
続いて「III 漢王朝の繁栄」では、青銅器の造形や彫刻の精密さが飛躍的に上がる。立体造形が得意な僕としては、
当時の天才たちがアイデアと技術を極限まで研ぎ澄ませてデザインを完成させた様子を想像するのが楽しいのだ。
また陶製のさまざまな俑(副葬品、もともとは殉死者の代わりで埴輪的存在)が並ぶ。騎兵も歩兵も動物もいる。
工芸品だけでなく銅銭や銅銭を鋳造する型もあって、遠い歴史がすぐ目の前にある事実に酔いしれるのであった。

1階に下りるといよいよ撮影タイム。気になったものをバシバシ撮っていく。スマホではなくデジカメでいくもんね。

  
L: 金銀象嵌帯鉤。帯を留める道具。  C: 一級文物の青銅長剣。一級文物とは日本でいう国宝。  R: 青銅甬鐘。

 
L: 青銅戟(げき)。戟は矛(上)と戈(か、下)を組み合わせた武器。  R: 秦の時代の文字が刻まれている。

撮影の許可が下りた武器・工芸品・木簡などが並ぶスペースを抜けると、フォトジェニックな馬車。でもこれは複製品。
そしてその先がクライマックスの兵馬俑である。殉死の代わりの副葬品だが、秦の時代には人間サイズでつくられた。
(平均身長が約180cmなので厳密には少し大きいと思う。漢になると、秦との違いを示すこともあり1/3サイズになった。)
これまでの工芸品の展示を見てから兵馬俑を見ると、そりゃこのサイズだからこそ精密につくれるよな、という感想。
しかし現在までに発掘された数がなんと約8000体で、やっぱり秦の始皇帝はとんでもない権力なのだ。質も量も桁外れ。

  
L: フォトジェニックな2号銅車馬(複製品)。  C: 兵馬俑の展示スペース。閉館時刻から逆算して入ったのに大変な盛況ぶり。
R: もう一丁。撮影して「やべえ、人の顔が入った!」と思ったら兵馬俑の顔だった、というパターンがけっこうあった。

せっかくなので、展示されていた兵馬俑をぜんぶ撮ってみる。どれがどれだけワケがわかんなくなってしまうので、
今回の展示品についている番号も併記しておく。本当はそれぞれ1体ずつ名前があれば面白いんだろうけどね。

  
L: まずは鎧甲軍吏俑(#47)から。鎧を着用した下級軍官。  C: 背中側はこんな感じ。  R: こちらも鎧甲軍吏俑である(#48)。

  
L: 鎧甲騎兵俑(#49)。馬を引いている。  C: 鎧甲武士俑(#50)。秦の一般兵士。  R: こちらも鎧甲武士俑(#51)。

  
L: 顔をクローズアップ。鎧甲軍吏俑(#48)。  C: 鎧甲騎兵俑(#49)。  R: 鎧甲武士俑(#50)。なるほど顔が違う。

  
L: 戦服将軍俑(#46)。将軍俑は今までに11体しか発掘されておらず、非常に貴重。  C: 背中。  R: 顔を眺める。

兵馬俑というと直立しているイメージがあるが、ポーズがついているものもある。弩(クロスボウ)を構える跪射武士俑、
弓を構える立射武士俑が展示されており、動きがついているとさらに面白い。紀元前210年ごろの作品なんだよなあ。

  
L: 跪射武士俑(#52)。  C: 背中側。よくできているなあと興奮してしまった。  R: 顔はこんな感じ。

  
L: 立射武士俑(#53)。  C: 横から見ると踊っている感が少しあるなあ。  R: 顔はこんな感じ。

戦車を引っ張る馬も1体展示されていた。説明文には「焼成温度は950度から1050度」とあり、
そうか、このサイズをひとつひとつ焼いているわけだ、とまた呆れる。いや本当にとんでもない。

  
L: 戦車馬。やっぱりほぼ実物のサイズ。  C: 横顔。  R: 漢の時代の彩色男子立人俑。高さ47cmだとこの粗さになるか。

1体ずつじっくり見ていくのは実に贅沢な経験だった。でもそうなると、「きみのお気に入りのおじさんはどれかな?」
ってな感じだなあ。世界のナベアツ(桂三度)がいっぱいいた。3の倍数と3が付く数字のときだけアホになる兵馬俑。

 
L: プロジェクションマッピングで彩色を再現している。  R: 最後の記念撮影コーナー。実物より少し小さいレプリカが並ぶ。

最後に記念撮影コーナーということで兵馬俑のレプリカが並んでいたのだが、あらためて見るとやっぱり、
YMO『×∞ 増殖』(→2004.10.21)のジャケットみたいに際限なく並んでいるからいいのだ、という気もする。
質も量も凄まじい兵馬俑、また青銅器やら陶器やら。並んでいる物がぜんぶ紀元前の歴史、という展示にただ圧倒された。



2023.1.26 (Thu.)

正月に潤平と音楽の話になり、最近の音楽は聴いていないのかと訊かれ、「過去ばかり振り返っている」と答えた私。
ここんところ懐かしのミュージシャンのベスト盤を借りてばかりの生活なのである。知識欲だけで音楽を聴いている。
すると潤平から「Official髭男dismは気に入るんじゃないか」と薦められた。なのでアルバム3枚借りて聴いてみたしだい。

結論から言うと、楽曲は悪くないと思うのだが、ヴォーカルがダメ。申し訳ございません。
ヴォーカルの影響でレートが★1つずつ下がる感じですね。なんというか、もったいなさが先に来る。以上。


2023.1.25 (Wed.)

ホームラン歴代3位の門田博光氏が亡くなったということで、また昭和が遠くなったわけで。
僕としては正直なところ、現役最終盤の記憶がギリギリある、という程度である。ギリギリで凄さを見逃した感じだ。
中学校の図書館にあった名球会マンガが本当に面白くて、それでプロ野球レジェンドについての知識をつけていったが、
門田氏は求道者としてのエピソードがとことん強烈。もっと早くプロ野球に興味を持っていれば、と残念に思っている。

それにしても同学年のレジェンドのコメントがやたらと多いなあと思っていたが、堀内恒夫氏のコメントによると、
門田博光・鈴木啓示・平松政次・福本豊・藤田平・堀内恒夫・谷沢健一・若松勉が同級生となるそうである。
これはとんでもねえ。レジェンドのプレーを実感できないまま、ただ訃報でかつての活躍を聞くのは切ないなあ。


2023.1.24 (Tue.)

『僕の心のヤバいやつ』がTwitterで話題になっているのでなんだなんだと思ったら、最新話で動きがあったようで。
僕はついこないだまで知らないマンガだったが(→2023.1.11)、世間はみんなちゃんと注目しているんだなあと感心。
ちなみに僕の日記を読んだワカメ(→2022.7.31)は、「ラブコメの最高峰やであれは」と素早く反応をくれたのであった。
「やっぱワカメもか!」と思った。いやあ、さすがよくチェックしてらっしゃる。それにしても「最高峰」とは。
よく麻薬は脳に直接快楽を与えるというが、『僕ヤバ』も脳に直接快楽を与えてくるよね! ふわっふぅ。
Amazon/KindleでTwitter掲載分などのまとめを無料で読めるのもすばらしい。毎日悶えておることよ。

仕事終わりに黒湯に浸かった後で最新話を読んだのだが、やっぱ男は女には勝てねえんだよなあと思う。
この翻弄される感じがいいのよね。ワガママに翻弄されるのではなく、純粋な気持ちに翻弄されるのがいいのだよ。
あとは根底に自己肯定があるのが現代風であるかなと。自己を構成する環境への感謝を通じての自己肯定。
しかし今後どうなっていくのか。日光東照宮の陽明門は逆柱でわざと未完成にしているんだぞ(→2008.12.14)。
まあこれからも脳に直接快楽を与えてくれるとは思うが、前人未踏なラブコメだけに締めが難しいよなあ。
トラブル→解決のパターンで引っ張るのも違うだろうし。ヴァリエーション豊かにがんばってほしい。

さて、4月からはアニメ化されるそうで。それ自体は別にいいが、花田十輝が関わるのは本当に本当に勘弁してほしい。
変にアニメの逆輸入みたいな影響を受けず、マンガはマンガで今の感じを貫いていただきたい。大丈夫だろうけど。


2023.1.23 (Mon.)

須賀達郎『ボールパークでつかまえて!』。正月の試し読み祭りで捕まってしまいました。

プロ野球のスタジアムに集まる人々を描いた群像劇。中心になるのは、しがないサラリーマンとビールの売り子さん。
こんな純情ギャルの売り子さんがいたら惚れてしまうやろ!と思ったらもう手遅れである。うまいところを突いたなあ。
プロ野球、そしてスタジアムに関わる要素をことごとく拾っており、しかもいい意味でユルさを保って読みやすい。
登場人物全員が主人公となっているのが実に見事。前に『グラゼニ』でマンガ文化の成熟ぶりを感じたが(→2012.6.18)、
これまたいいネタを発掘してきたものだなあと感心している。これからも穏やかに楽しませてもらいましょう。


2023.1.22 (Sun.)

『戦場のメリークリスマス』。大島渚監督作品は今年4月に国立機関に収蔵される予定になっているそうで、
大規模ロードショウはこれが最後の機会とのこと。どうせなら4K映像を堪能できる映画館で見よう、ということで鑑賞。

結論から言うとこれはもう、ビートたけしの好演、それだけ。主人公が誰だかよくわからねえなあと思って見ていたが、
終わってみたらこの作品はたけしの映画だった。たけし以外の部分はクソつまんなかったです、はっきり言って。
正直、大島渚の映画監督としての力量には疑問を感じる。野坂昭如をマイクで殴ったのがいちばん面白かった人だね。
まあつまりは、説明なしの映像で観客に監督の意図をわからせるのは本質的に難しい(→2021.7.30)ってことだろう。
2時間以上も観客を物語の中に没入させるのは、実際には並大抵のことではないのだ。そう思っておくことにする。

もうちょっと掘り下げて批判すると、配役はいいのだが、それを乗せるにふさわしい展開を用意できなかった感じ。
ホモの話かと思ったら、最後までそれになりきれなかったのが痛い。この映画は男しか出てこないわけだから、
人間の持つすべての感情を男だけで表現しなければならない。ホモ行為はわれわれには特殊な行為となっているが、
その前提を観客に理解させればOKになっちゃうはずなのだ。まあ、大島渚に映画監督としての覚悟が足りなかったね。
敵味方を超えた親愛の情と、その身体的表現と、性愛。それぞれのレヴェルが整理できていないから混乱するのだ。
それらをきちんと整理したうえで、日本的感覚(武士道? 軍国主義?)との葛藤を描けばマシになったはずなのだが。
回想シーンの寄宿舎も(デヴィッド=ボウイの学生姿は無理があるのう)、そこを衝かないから浮いているのだ。
結果、物語中で唯一人間的な成長を見せたハラの独擅(壇)場となる。ビートたけし生来のシャイさが完璧な演技となる。

今後、坂本龍一の「Merry Christmas, Mr.Lawrence」が、僕の中で「つまらん映画のBGM」に堕ちてしまうのが心配だ。
あと、俘虜長の動きを見てどうしてもモンティ・パイソンを思い出してしまい、声を出して笑いそうになって困った。



2023.1.20 (Fri.)

新しい炊飯器が絶好調でございます。

今まで使ってきた炊飯器は内釜のダメージがけっこう大きく、考えてみれば国立にいた頃から25年以上使ってきたわけで、
もうそろそろ新しい炊飯器を買って日常生活の満足度を微増させるのも悪いことではないんじゃないか、そう思ったのだ。
まだ動く機械を新調するのはなんだか後ろめたいが、思いきって購入。最も安いマイコンの炊飯器でもよかったが、
これからも長く使うとなるとちょっと高くても年単位で考えれば差は出ない。それで1ランク上のIHのやつにした。
いざ使ってみると味が劇的に旨くなったわけではないが、今まで細かい部分でストレスがあったことに気づいた感じ。
これでメシを炊く機会が増えれば経済的にもありがたい。いい設備投資ができたと喜んでおります。

……国立にいた頃から25年!? つまり、大学入学から25年!?


2023.1.19 (Thu.)

東工大と医科歯科大が合併して(→2022.10.13)、新しい名称が「東京科学大学」になるんだと。
このニュースを聞いて真っ先に思い浮かんだのは、細野不二彦『Gu-Guガンモ』のリンダ=スカイラークである。
「ダッセーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
こりゃもう完全に日本は工業立国じゃなくなっちゃうよね。産業の空洞化、衰退する日本が透けて見える。

……よく考えたら僕は当事者だった。最終学歴に(現・東京科学大学)とか入るの、本当にイヤだなあ。
それならいっそ、日大の通信教育を最終学歴とした方がまだマシなんじゃないか。

2001年3月:一橋大学 社会学部 社会理論課程 卒業
2003年9月:東京工業大学 大学院情報理工学研究科 情報環境学(建設系)専攻 修士課程修了
2008年11月:日本大学通信教育部 文理学部 英文学専攻 中退
2018年3月:日本大学通信教育部 法学部 法律学科 中退

こうして見るとなんだか2勝2敗って感じだが、(現・東京科学大学)が入ると1勝3敗な気分である。勘弁してくれ。
でもマジメな話、「東京工業大学」という名称が消えたら、僕のOBとしての矜持はなくなるも同然なのだ。
それは自分の母校ではない、という感覚になるのは間違いない。母校がなくなるのは初めての経験だが、寂しいなあ。


2023.1.18 (Wed.)

新しいMacBook Proが出た、というインターネット記事を見かけたのであった。
そういえば僕のMacBookは買ってからどれくらい経つんだろう?と思って日記を見たら、6年経っていた(→2016.12.10)。
ってことは、そろそろなのかと。いつどんなトラブルが起きても対応できるように、覚悟を決めておくべきか。

最大の問題は、Macがもうインテルのチップじゃなくなって久しいので、現状のソフトが使えなそうで困るってことだ。
僕はMacBookを事実上、出先でPhotoshopとDreamweaverとIllustratorを使うためのマシンとして特化させている。
これらがぜんぶダメとなるとダメージは計り知れない。サブスクとか本当に勘弁してほしい。嫌な世の中になったなあ。
まあ冷静に考えれば、PhotoshopとDreamweaverとIllustratorのCS5を10年以上使っている方がおかしいのかもしれんが。
(当時はWinとMacでそれぞれ買うという大散財ぶり(学生版ではあるが)だったが、結果的には大勝利であった。)
とりあえずは、今のMacBookでとことんまで行ってやるのである。とことんまで楽しませてもらうのである。


2023.1.17 (Tue.)

職場はまともな人だらけなのである。採用試験に受かったから結婚しました、子供が生まれます、そろそろ家を……。
周りが眩しくってたまらない。一点の迷いもない、正しい人生。こちとらもう本当にすいませんねと思いつつ生きている。

世の中には2通りのタイプがいる。何の迷いもなく人としての正しい道をたどっていける人と、そうでない人である。
僕はそれこそ小学生くらいのときから、周りはみんな誰に教わるでもなく「年相応」の人生を着実に歩んでいけるのに、
自分にはその能力が欠けていることを自覚していた。その能力がどうやれば先天的に備わるのか、不思議でならなかった。
おそらく遺伝子レヴェルで内蔵されている精神的成長がきちんと機能しているのである。覚悟のスイッチが発動する。
そして、それは僕にはないものだ。おかげで脱皮することなく、小中学生の感覚を純粋に保持しながら今も生きている。

最近の世の中は、結婚しないことについて劣等感を持つことはない、というような風潮が湧き上がっているが、
これにはまったく賛同できない。結婚しないことを正当化するのは単なる居直り、歪んだ自己正当化であると思う。
もちろん実際にはどうにもならないケースがあるのも確かだろうが、種の保存を否定するのは生物学的にまずいだろう。
これまで性的マイノリティが生物学的な生産性の欠如を社会的な生産性で取り返してきたように(→2018.10.26)、
結婚しない(できない)側のわれわれもその分を社会的な生産で貢献することを考えるのが平等ってものなのだ。
「少数派を自覚して条件闘争を仕掛けよ」と前に書いたが(→2021.8.31)、僕はこの件について少数派だと自覚している。
多数派の価値観に噛み付くことなく尊重しつつ、劣等感をきちんと持ちつつ、考えることをやめずに生きていきたい。


2023.1.16 (Mon.)

GYAO!が3月いっぱいでサーヴィス終了だと。ちまちまとアニメを見るのに最適だったのだが……。さてどうしたものか。


2023.1.15 (Sun.)

高橋幸宏が亡くなった。YMOのメンバーということで世間には知られているが、それ以外でも偉大なミュージシャン。
もちろん僕はYMOから入って、高校時代から絶対的な影響を受け続けてきた人なので、ショックは筆舌に尽くし難い。
(YMOについての過去ログはこちら。熱く語っております。→2004.10.212004.11.72009.1.172017.3.32017.9.25

前に書いた思い出話と重なる部分もあるけど、気にせず書き散らしていくとしよう。
きっかけは高校時代、YMOのスコアが班室の備品にあったことだ。YMOというグループ名はどこかで聞いたことがある。
じゃあこれを自前のSC-55mkII(→2009.12.202017.4.5)で鳴らしてみようと、持ち帰ってそのまま打ち込んだ。
最初にやってみたのが「ライディーン」である。これがいちばん有名だった気がする、くらいの感じで選んだのだ。
だから原曲を聴くより先にMIDIで演奏したわけだ。テクノっぽい音色ということでノコギリ波と矩形波をメインに据え、
ベースはシンセ系の音で。テクノなのにドラムスがきちんと生演奏向けのスコアになっているのが、僕には意外だった。
でも素直にフュージョンと同じ構成で鳴らしてみた。そしていざ聴いてみると……! YMOって、面白いじゃないか!

あらためてきちんとYMOのスコアを買い、やはり有名な「テクノポリス」や「東風」も打ち込んでみる。すばらしい。
しかしヴォーカル曲もある。これどうしてんだと思っているところで『TECHNO BIBLE』である。借りて原曲を聴く。
そこから僕の人生が狂いだしたというわけである。で、ヴォーカルはユキヒロさんが歌っていた。ドラムスが歌うのか!
ヘッドセットを装着して叩きながら歌うのはC-C-Bのイメージだったが(笠浩二さんも亡くなってしまった……)、
元祖はYMOだったのかやっぱりかっこいいなあ!となる。中二病としては憧れを禁じ得ないのである。もちろん今もだ。
機械(データ)に合わせつつもしっかりグルーヴィーなドラムスは、フュージョンとテクノで揉まれた自分には理想形だ。

YMOというと細野さんと教授の強烈な個性が注目されがちだが、僕には均等に、本当に均等に3人のバンドだった。
アンビエント方面の前衛を細野さんが担い、教授は消すことのできない強烈な存在感のメロディと最高のアレンジを担い、
ユキヒロさんが2人の緩衝役とライトなファン層とのパイプを果たした……だけじゃなくてきちんと狂っているのが最高。
『BGM』で「バレエ」と「カムフラージュ」、『テクノデリック』で「ジャム」の果たしている役割はきわめて大きい。
細野さんとの共作もよくって、「キュー」は教授が嫉妬してドラムス叩くほどだし、「手掛かり」の世界観も完璧だ。
やはりYMOは1993年の「再生」でコケた(とされる)ものの、時間を経て緩やかに復活状態を維持できたのがよかった。
われわれ客にはグループに対する幻想があって(→2020.9.16)、それをきちんと肯定してくれたのは救いとなっている。
教授が癌と戦っている中、ユキヒロさんの病気も明らかになり、訃報を聞くことになった。まさか、でも、ついに。
(細野さんは去年10月に天河大弁財天社で楽器をブンブン振り回して演奏しており、めっちゃ元気である。→2022.10.9)
今後YMOの曲を聴くたび、ユキヒロさんのヴォーカルを聴くたび、感傷がついてまわることになる。しばらく我慢だ。

しかしYMOの音楽は、実はかなり残酷な事実を告げるものでもある。山下達郎のインタヴュー記事に詳しかったが、
彼ら(特に細野さんとユキヒロさん)の音楽の原点は、いいとこのぼっちゃんじゃないとできない70年代ロックなのだ。
教授は教授でやっぱりいいとこのぼっちゃんで、クラシックの英才教育を受けているし。それでこそのYMOだったのだ。
東京の区部(それも山の手、西部)出身じゃないとできない音楽。出自と環境の差を痛感させられる音楽でもあった。
田舎の馬の骨である自分には程遠い世界でもあった。僕は魅了されるしかなかった。憧れはただただ無限に。


2023.1.14 (Sat.)

『ラストエンペラー』。清朝最後の皇帝にして満洲国の傀儡となった愛新覚羅溥儀の人生を描いた映画である。
中心となって制作したのはイタリアだが、中国・イギリス・フランス・アメリカも合作に参加したとのこと。
ストーリー的に中国はよく協力したなと思う。でもおかげでロケをしっかりやったことでリアリティが抜群である。
できごとの発生を明らかに時間的に圧縮しているなど、フィクション度合いはかなり濃くなっているが、
往時の雰囲気がわかる再現映像としての価値は一級品ではないか。「つくったことが偉い」という映画であると思う。

展開は正統派で、政治犯収容所での尋問(現在)と回想(過去)を交互に挟みながら物語が進んでいく。
回想が収容所での現在に追いついたところで終盤へと向かっていく。上述のように時間を圧縮してテンポはいい。
それでもきっちりと描くべきものを描いているので163分。その間、飽きずに見せ続けるのも見事なものである。
そして坂本龍一の音楽がめちゃくちゃ効いている。メインテーマは映画の中で聴くとかなり感動的である。

さて感想だが、なんというか、「無」である。これは悪い意味ではなくて、山あり谷ありの結果、プラスマイナスゼロ。
溥儀は時代に流されまくって利用されまくった人生で、自分ではどうにもならない運命に翻弄されたわけだが、
自分からそこに突っ込んでいった側面もあり、完全に同情できはしない(その冷静な描写がちゃんとしている)。
逆を言えば、溥儀自身のドラマをきっちりプラスマイナスゼロに収めたことが素晴らしいとも考えられるだろう。
政治犯収容所の所長を確かな善人として、基準をつくっているのが巧い。彼がいなけりゃ溥儀ごと完全に「無」である。
文化大革命に巻き込まれる所長を描き、翻弄されたのが特別扱いされた溥儀ひとりではないのだという事実、
それを客観的に示したことで、溥儀自身はプラスマイナスゼロでも映画全体の印象が深いものとして刻まれる。
上で述べたように往時の雰囲気を再現した価値と、あと音楽の効果と、意義ある映画だったと思わせる要素は多い。

溥儀のドラマがプラスマイナスゼロで「無」に収束したことで、締め方がなんだか邯鄲の夢って感じである。
そういえばコオロギ科で邯鄲という虫がいる。これを監督は知っていて重ねたとしたら、とんでもなくオシャレだ。


2023.1.13 (Fri.)

元阪神のバースが野球殿堂入りとのこと。おめでとうございます。
僕はリアルタイムではそこまで野球に熱中している時期ではなかったが、その活躍ぶりは覚えております。
あのとんでもないインパクトを40年近く経ってから評価するというのは遅い気もするが、何にせよめでたい。

ラミレスも野球殿堂入り。まあ2000本打っているからね。ヤクルトから巨人へ行ったのでモヤモヤはわずかにあるが、
めでたいことには違いない。今後もレジェンド外国人選手の再評価が進むことを切に願っております。


2023.1.12 (Thu.)

ジェフ=ベックが亡くなった。あまり洋楽を聴かない僕だが、個人的には最も「すごい」と思うギタリストである。
(ジェフ=ベックについては、前にログで高中正義との比較という形でふれている。→2015.1.15

中高生の頃の僕はフュージョンを中心にインストゥルメンタルにどっぷり浸かっていたわけだが(→2017.2.18)、
基本的には国内のミュージシャンしか聴いていなかった。そんな中、洋楽の知識がある潤平から教えてもらったと思う。
ギターのインストゥルメンタルが好きであれば、ジェフ=ベックの『Blow by Blow』と『Wired』は必須である、と。
実際に聴いたのは大学に入ってからだが、いい音楽は国内のフュージョンだけではないと、広い世界を突きつけられた。
そしてドラマーとして「Scatterbrain」のリチャード=ベイリー(当時18歳)で挫折するのである。がっくりだぜ。

どちらかというと『Blow by Blow』の方が、ギター・インストゥルメンタルの記念碑的作品という扱いで有名な気がする。
聴いてみると、確かにそれまでヴォーカルに任されていたことをギターの表現力でやりきっていて、多様な印象だ。
初めて聴いたときにはやっぱり「Scatterbrain」に「どうやってんだこんなの」と圧倒されてばかりいたのだが、
落ち着いて考えるとそれ以外の曲がスムーズに聴けるのは『Blow by Blow』のジェフ=ベックが先駆者だったからで、
1975年のこのアルバムが存在したからこそ、後続のフュージョンバンドが可能性を追求することができたのである。
ジェフ=ベックに追随した音楽に馴染んでいたから、僕は『Blow by Blow』を何の違和感もなく受け止めたってわけだ。
聴くときはいつもギターに注目するんだけど、楽器のバランスがよくて気づけば曲全体の方に意識を持ってかれちゃう。
ギターのジェフ=ベックが主人公であるはずだが、彼が脇役部分も100%の力で献身的にやるからそうなっているのだ。
それにしても、「ギター殺人者の凱旋」ってバカな邦題をつけたやつはいったい誰だ。何を食ったらそうなる。
ロックからヴォーカルを追い出した、ということで考えるとギリギリ納得は……できっこねえよ。

続く1976年に発表されたアルバムが『Wired』。こちらもギター・インストゥルメンタルの名作として名高い。
キーボーディストのヤン=ハマーの影響がかなり大きく、僕としてはジェフ=ベックとヤン=ハマーの共作に近い印象。
その分だけフュージョン要素が強いというか、従来ヴォーカルの担っていた部分がついに削ぎ落とされた感がある。
だからインストゥルメンタルとしてさらに一歩踏み込んだアルバム、結果的にロックという枠を広げたアルバム、
そんなふうに僕は受け止めている。やはりギターが主人公のはずだが、あくまで楽器のひとつとしての抑制もあり、
ジェフ=ベックという人が何よりも曲全体のことを考えて自分のパフォーマンスを追求していたことがよくわかる。
ものすごいテクニックと表現力なんだけど、ぜんぜんエゴじゃないというのがジェフ=ベックのギターなのだ。
彼のプレイは僕にとってインストギターの基礎というか基準になっている。教養としてのギターって位置にある。

さて、ジェフ=ベックが亡くなったことがショックなのは、尊敬するギタリストが亡くなったから、だけでなく、
僕にとって親の世代の人が亡くなったから、というのも正直ある。いいかげん大人として振る舞う覚悟を決めねば。


2023.1.11 (Wed.)

桜井のりお『僕の心のヤバイやつ』。正月にソムリエ(潤平)から強く薦められた作品である。
電子書籍で1巻だけまるまる無料となっていたのですぐに読んでみたのだが、市川がヤバイやつと見せかけて、
実はもっとヤベエ山田にツッコミを入れて楽しむマンガだと認識。その旨をソムリエに伝えたところ、それは違うと。
2巻以降すぐに話が大きく動いていくというので、東京に戻ってからできるだけ早く既刊7巻まで読んでみたのだが、
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛と悶えずにはいられないのであった。うおーウホホホホーイ!
ぼく、高木さん(→2016.4.202022.1.31)よりこっちの方がいいです!

山田がめちゃくちゃかわいいんですよね、そして市川もまたかわいい。地球上のすべての男子中学生の夢とちゃうか。
「これはもうセッ○スなのでは?」と言いたくなる事態まで発生してますわよね。お嬢様言葉になるほど動転している。
このマンガで評価すべき点はいくつもあるのだが、最も特徴的な点は、家族を描くことから逃げていない点である。
親というのはつねに邪魔してくる存在であるという絶対的事実がそもそも厳然としてあるわけだが(当社比)、
フィクションのストーリーにおいても親という存在はつねに「現実」を象徴する役割として登場せざるをえない。
古来、ラブコメマンガの傑作たちはそこをとことん避けてきた(たとえば、桂正和『電影少女』→2005.8.17)。
しかし『僕ヤバ』は逃げない。いや、むしろ当人どうしの告白よりも先に、親に行くのである。そこがすごい。
そしてここでロジックを見事にひっくり返しているのだ、「相手の親に対して恥ずかしいマネはしない」と。
1週間ほど前のログで「ラブコメ系は先に結婚しちゃって後から距離を詰めていくような感じのものが人気なんですかね。
先が読めない展開というよりは、ハッピーエンドを保証したうえでのドキドキ、という方向性が目立つと感じる。」
と書いたけど(→2023.1.3)、それと同じだと思うわけです。両親公認状態というゴールを保証して距離を詰めていく。
『僕ヤバ』は、中二病の症例を一服の清涼剤としつつも、健全なるラブコメを着実に展開するという新たな発明なのだ。
そうやって我が心の中学校・高校生活の無念なあれこれを成仏させていくのだ。ああ、心が清らかになっていく……。

それにしても洗足、めっちゃ地元。そんな近所でイチャつかれていると思うと……ぼかぁもうっ、ぼかーもうっ!


2023.1.10 (Tue.)

年末年始をコロナ陽性で過ごした皆様がたいへんに多い模様。それはそれで好都合だった、と笑っている一方、
やはり病状はシャレにならなかった、とも。マスクなど感染を広げない努力はまだまだ継続しなくちゃいかんだろうなあ。



2023.1.6 (Fri.)

Bunkamura ザ・ミュージアム『マリー・クワント展』。クイズ的には「ミニスカートの人」なのだが、きちんと勉強。

25歳で開店した「バザー」時代から初期の足跡を丁寧に追っている展示、という印象。実物の服やモデルの写真が並び、
時代性をしっかり感じさせる工夫がなされているのがよい。懐古的な静的過去形ではなく、過去進行形のタイムスリップ。
夫のプランケット=グリーンと実業家のアーチー=マクネアに支えられつつも、確かなデザインで時代を牽引していく。

マリー=クアントが活躍した最大の秘訣は、1960年代イギリスという条件を最大限に生かしたことにあると思う。
停滞していくイギリス社会では既成の価値観を打ち破る動きも活発化しており、モッズが若者文化として広がっていた。
マリー=クアントはこの動きを的確につかみ、彼らの潜在的な欲求を満たす新たなファッションを形にしていったわけだ。
これはその後に社会進出を果たしていく女性という需要を掘り起こすことでもあった。社会の変革を見事に促していく。
さらに鋭いのはイギリスに留まらずアメリカに進出することで、後の大量生産社会をリードする側にもまわったことだ。
ライセンス契約によって洋服からファッション全体へと活躍の場を広げ、デイジーマークを通して多角的に展開する。
まさに1960年代という時代を象徴する業績で、ここまで鮮やかに時代を味方につけた人がいたのか、と驚かされる。

ところが、マリー=クアントのデザイン自体は一貫して「モダン」の印象を残すのが面白いところだ。
前に美術館とマンガからフォーマルのコードとモードの関係について考えたことを書いたが(→2021.8.122021.9.5)、
マリー=クアントはピナフォアドレスを軸にして、既存の伝統を再解釈して日常の気軽なレヴェルに引き落とす。
でもそのデザインにはきちんと品格が保たれているのである。落ち着いた暖色系を多用するのはその証拠だと思う。
70年代以降のように常軌を逸することで注目を得る厭らしさは皆無だ。彼女はモダンの最終形と言えるのではないか。
たとえば自分が女装するとして、マリー=クアントのデザインしたドレスを着たとしたら、絶望的なことになるだろう。
体格的に決してごまかしのきかない、女性が生まれ持った魅力に応じた、女性のためのデザインとなっているからだ。
実際にはしっかりと正統派、だからマリー=クアントはモダンなのである。モダンだから次の時代への橋渡しができた。
マリー=クアントが華々しく登場した当時は既成観念の破壊者だったかもしれないが、今から見れば良識の枠内そのもの。
フォーマルのコードを逸脱することなく換骨奪胎するセンスは、あらためて冷静に評価したいものである。勉強になった。


2023.1.5 (Thu.)

職場で行われた地学の研究会に参加する。というのも、テーマが「国土地理院の地図」だったから。
パワポのスライドを参考に、ウェブ上で利用できる地理院地図の活用法を3時間みっちり体験するのであった。

地理院地図は実はかなり多機能(しかも無料)で、むしろ機能が多すぎて途方に暮れてしまいがちなくらいなのだ。
とりあえずメニューを上から試していったのだが、かなり強力。1960年代の写真と現在の写真を並べて比較してみるが、
職場周辺は1960年代には本当に農地。低い部分を田んぼが埋めている様子はまるで壱岐(→2018.11.4)のようだ。
その低地を昔からの道が走り、新しい道は後からまっすぐ一気に整備されたのもよくわかる。これは飽きない。
好きな範囲を3Dで取り出して見ることも可能である。上空から見た光景をいろんな角度から眺められる。
次は色別標高図と陰影起伏図。これを透過率を操作して標準地図と重ねると、元の地形がはっきりとわかるのだ。
東京の多摩地区が武蔵野台地をベースに立川崖線と国分寺崖線で河岸段丘となったかなり平らな地形なのに対し、
多摩川を挟んだ川崎側は多摩丘陵の勢力圏となり起伏が非常に複雑。神奈川らしさを実感できたのであった。
「土地の成り立ち」の中の「日本の典型地形」では、火山・河川・海などそれぞれの作用でつくられた地形が、
日本全土を網羅してマッピングされている。旅行の予習には最高の素材である。気の遠くなるような作業をやったなあ。
災害の記録にも力を入れており、災害の様子を収めた航空写真も豊富。さらに自然災害伝承碑も押さえており、
これまた全国各地の碑が網羅されている。ちなみに飯田近辺は「三六災害」関係ばっかりなのであった。

というわけで、ひたすら地理院地図をいじくりまわした3時間だったが、それでも機能をすべて使ったわけではない。
授業で効果的に使うには、事前にしっかりとプランを練らないとワケのわからんことになるのは確実である。
とりあえず、暇な人はぜひいじくりまわしてみてください。「地理院地図」で検索すればずっと遊べますぜマジで。


2023.1.4 (Wed.)

東京に戻ってまいりました。究極的に怠惰な生活をさせてもらったおかげか、昨年と比べるとメンタル的にはだいぶよい。
開き直っていられるというか。またどうせすぐに忙しくなって苦しくなるんだろうけど、リフレッシュできてありがたい。


2023.1.3 (Tue.)

実家で怠惰に電子書籍の試し読みをしていたのだが、日本のマンガってのは本当にすごいなあと再認識。
やはりしっかりとした取材・研究にもとづいた作品が、知識のつく点も含めて評価されているのがすばらしい。
簡単に言うと、「読めば何かしら賢くなるマンガ」がきちんと人気になっていることがよろしいと思うのである。
魅力的なフィクション(=嘘)を成立させるためにリアリティの追求を惜しまない、その研究熱心さが好きなのだ。
特に近年はその傾向が強まっているように思える。今年はそういうマンガをしっかりと読んでいきたいものだ。

ラブコメ系は先に結婚しちゃって後から距離を詰めていくような感じのものが人気なんですかね。
先が読めない展開というよりは、ハッピーエンドを保証したうえでのドキドキ、という方向性が目立つと感じる。
それはそれで嫌いではないしむしろ好きなのだが、読み終わって現実に戻ったときの虚しさがつらいところである。
ま、自己責任なんですけどね。

異世界系のマンガについては、バカでエロなものが最強であるという結論に至ったのであった。
ゲームの設定みたいな部分をネチネチやるのはファンタジー脳(能?)のない当方は「そんなん知らんがな」とウンザリ。
どうせ欲望に忠実であるなら、そんなものは端折ってやりたいことをストレートにやってもらった方がずっといい。
バカでエロなものは、異世界が目的ではなく手段なので、読んでいてストレスがない。消費財ならそれで十分だろう。

ソムリエ(潤平)からもいくつかオススメを紹介してもらったし、ちゃんと世間についていくという意味でも、
今年はマンガをたくさん読む年にしたい。マンガを読んで、賢くなって敏感になるのが目標ですな。


2023.1.2 (Mon.)

バヒさんと会う。いつもメンタル的に世話になっているので、アンテナショップで仕入れた熊本の焼酎をプレゼント。
樽で寝かせた米焼酎で、弱い当方が好きで飲む数少ない品である。ウイスキーが高騰しているらしいので代用にどうぞ。
そしたらバヒさんからも各種プレゼントをもらった。アレですね、バヒさんわりと和風な方向性に行ってますね。

ランチタイムへの時間調整ということでまずは本屋から。のんびりとマンガのコーナーを2人で見てまわる。
平積みの『SPY×FAMILY』を見て「言うほど面白くねえよなあ、キャラでもってるだけだよなあ」と意気投合。しかし、
バヒ「アーニャがかわいい」
オレ「ヨルさんだよなあ」
バヒ「アーニャのおバカさがいい」
オレ「ヨルさんにキ○タマ踏まれたいよな」
ということで互いの趣味嗜好は平行線のまま、物別れに終わったのであった。

さて今回はアップルロード沿いのステーキチェーンをチェックしたいというので同行(中華料理は勘弁してください)。
期せずして2食連続のステーキになってしまったが、タンパク質不足に苦しんだ昨年を考えれば正当化できるぜ、と。
結論から言うと、やはり昨夜行った店が圧勝なのであった。その偉大さが確認できたのは素直によかったと思います。

僕がまだ初詣をしていないということで、冨士山稲荷神社に参拝する。前に飯田の御守集めをしたが(→2015.1.1)、
そのときにはスルーしていたので大変ありがたい。御守は稲荷神社らしく宝珠をメインにした独自のデザインで、
頂戴できて本当によかった。バヒさんは「(男性の神職さんで)巫女さんじゃなかったなあ」と相変わらずであった。

  
L: 冨士山稲荷神社。通称「ふじやまさま」。  C: 参道を行くと石段。  R: 上りきったところに拝殿。吊灯籠が稲荷だなあ。

その後はいつもお邪魔している座光寺の喫茶店へ。バヒさんはすでにいろんな豆を飲み尽くしているので、
今回はウィンナ・コーヒーなのであった。当方は違いのわかる男ではないのでお店オススメのブレンドをいただく。

特にやることもないのでカフェのハシゴをしようとするが、アフタヌーンティーの店は満員で断念。
というか飯田でアフタヌーンティーができる店があることにびっくり。やる気のある人がいるんですなあ。
それで結局、銀座の老舗でのんびり一息。僕はあえてブレンドの飲み比べをして、ローストの違いをなんとなく実感。
オレが必死であちこちに旅行している間、バヒさんはコーヒーを追究していたのねと納得するのであった。
そんでもって、そんなにコーヒーを飲んでいるならと、旦部幸博『コーヒーの世界史』(→2022.6.24)を推薦する。
最後に伊賀屋の店内を見てまわる。もともとなんでもありのおもちゃ屋だったが、磨きがかかっている印象。

次に会うのはお盆なんだろうけど、バヒさんにいろいろネタを提供できるように面白おかしく過ごしたいものである。


2023.1.1 (Sun.)

あけましておめでとうございます。天気がいい中、実家で怠惰に過ごしております。
晩飯は恒例となっているステーキをいただく。タンパク質をたっぷり摂取できてありがたい。
夜は東西対抗のお笑い番組を見るが、コントばっかりでしょんぼり。コントは漫才に劣ると確信した正月であった。


diary 2022.12.

diary 2023

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