diary 2012.11.

diary 2012.12.


2012.11.30 (Fri.)

国家公務員宿舎の家賃が安いという批判があって、結局半分が廃止されるって話なんだけど、愚かすぎないか?
物事を解決するには複数の方法があるが、その中でいちばん短絡的で思慮の浅い、副作用の大きい方法をとっている。
とりあえず、問題は2つ。ひとつは、長期的な視野を持たない施策の横行。もうひとつは、他人の足を引っ張る精神。
この2つがいかに今の日本を窮地に追い込んでいるか、公務員をめぐる諸問題からちょっと考えてみよう。

僕も当事者で困っているのは、官民格差をなくそうってことで公務員の給与がガンガン削減されている件だ。
給与を下げるという解決法は実に簡単。簡単なんだけど、それは消費を冷え込ませるという結果に貢献するわけで、
まったくもって賢い方法であるとは言いがたい。「隗より始めよ」と言うのであれば、まず公務員に消費をさせろよ。
そうして民間を潤わせることが、本来の官民格差解消じゃないのか。公務員を通じて民間の首を絞めてどうする。

理想的な解決策は、公務員の給与を削減することではなく、消費を義務づけてしまうことである。逆説こそが真理。
給与のうち何%を消費するか決めて、強制的に買い物をさせてしまう。できるだけ貯金を阻止してしまうのだ。
どんな出費に対してもレシートを用意させて、月にどれくらい消費したかを申告させればいい。なりふり構っていられない。
必要のないものを買いたくないという人には、東日本大震災への募金を消費の一環として認めれば問題ないのだ。
これは民間企業も儲かるし、被災者も助かるし、公務員も給料削られないし、みんなが得をする仕組みだよ。
そういう発想をせず、安易に公務員の給与を下げてみんな平等ですとか、どんだけバカなのか。書いてて腹が立ってきた。

そもそも腹が立ってしょうがないのは、世間がすっかり毒されている、他人の足を引っ張る精神である。
公務員は安定しているから給与を削っても大丈夫、そもそも苦しんでいる民間企業と比べて公務員は楽をしている、
そういうステレオタイプがまかりとおっている。そんなもん、企業もさまざまなら公務員もさまざまじゃ!
他人(ここでは公務員)が気に入らないからその足を引っ張って満足をするとは、なんと卑しい精神をしているのか。
隣の芝生が青いからって枯れ葉剤を撒くようなマネをして、いったい誰が得をするのか。少なくとも日本の国力は低下する。

というわけで、最後はドラえもんののび太に対する暴言を引用して締めたいと思います。
「日本じゅうがきみのレベルに落ちたら、この世のおわりだぞ!!」
やっとること一緒よ。


2012.11.29 (Thu.)

英語科の教員には、ある種の恐怖感があるんじゃないかって話。

英語の先生だから英語が大好きで欧米文化が大好きで日常生活もアメリカナイズされているかっていうと、
これが全然違って、むしろほかの教科の教員よりも日本文化に傾倒する傾向があるんじゃないかって思うのである。

たとえば、僕が中学生のときに英語を教えていたMr. 野村の口癖は「ハンバーガーなんて毛唐の食うもんだ」で、
いま考えてみるとこれはかなりの暴言なのだが、僕はその精神をしっかりと受け継いでいるような気がしてならない。
高校時代にお世話になった先生も、趣味で尺八を演奏したり、落語好きが高じてそれっぽい口調になっていたり、
そういうところがあったのだ。で、自分はと考えてみると、暇さえあれば神社に行っているではないか。おお!

なんで?と訊かれても、正直これはよくわからない。ただ、なんとなくではあるんだけど、恐怖感はあると思う。
英語でメシを食っているがゆえに、自分という存在が英語に侵食されていく恐怖感。少なくとも、僕にはそれがある。
侵食してくる英語に対する反発ってことでか、自分の中でバランスをとるためにか、日本文化に対する興味が高まる。
どうも英語科の教員にはそういうところがあるように思うのである。そうでなきゃいけねえ、とも思う。


2012.11.28 (Wed.)

ついに過去ログの改修を完了したのだ! ……長かった。実に長かった。
2年前に「うまくいくかな?」と思いながら埋め込み直したリンクがしっかり機能するのはなかなか快感である。
前にログで書いたけど(→2010.12.18)、本当に「昔の建物の耐震工事」をやっている気分だった。
あのとき「改修」という表現を選んだのは間違いではなかった。振り返ってみて、これはまさに「改修」だった。

そもそも過去ログの改修は、何も好き好んで始めたわけではない。できることならやりたくなかった。
でもWindows7を導入した結果、Dreamweaverのヴァージョンを新しくせざるをえなくなったことで、
仕方がなく修正作業をしていくことになってしまった、というのが真相なのである(→2010.12.18)。
そこからはひたすら地道な修正を繰り返す日々。MacBookAir(→2010.12.23)で現在進行形の日記を書く一方、
VAIOで過去ログを直していく、その両輪態勢。かつてはログもあっさりしていたから作業はスイスイ進んだが、
2005年以降はログの量が激増。自業自得だが、つらかった。(→2011.11.72012.1.142012.5.132012.7.25)。
結局、長期の休みや部活の冬時間を利用して、できるときに一気に固め打ちで改修作業を進めることになった。
だから、わずか2年足らずで改修作業が完了するとはまったく思っていなかった。もっとかかると思っていた。
冒頭で「実に長かった」と書いたけど、確かに長く感じているけど、想定よりずいぶん早く終わってほっとしている。

でもこれで終わりではないのである。より見やすく画像を調整していく作業は、別途進めていくつもりでいる。
いや、それ以前に、北海道旅行をはじめとする夏休みの派手なふるまいが尾を引いており、日記がたまっている。
過去ログの改修工事が終わっていちおう一区切りはついたけど、まだまだ作業しなくちゃいけない箇所は多いのだ。
今後はもっと、過去を振り返っての反省を生かして、ログを簡潔にできるようにがんばりたい。修行あるのみ。


2012.11.27 (Tue.)

ひとえに僕がだらしないせいで、サッカー部の備品が今ごろになって届くということになってしまった。
年度当初の予算申請を備品の発注と勘違いしていたのがその原因。お金の計算のできない一橋OBだっているんだぜ。

部員たちが新しいビブスやレフェリーフラッグにはしゃいでいるのを見ると、なんだか申し訳なくなってしまう。
やはり中学生たちは新しいものに弱いのだ。新品であること、もうそれだけでテンションが上がってしまっている。
それでミニゲームで両チームともわざわざビブスを着ちゃったり、無意味に旗を持って副審をやってみたり、
すっかりお祭り状態となっているのであった。その無邪気なはしゃぎっぷりを見ていると、こっちも新鮮な気分になるわ。


2012.11.26 (Mon.)

2年生のテスト結果は狙いどおり。何が狙いどおりって、コツコツと勉強しているやつはしっかりと点を取り、
サボっているやつはことごとく撃沈する、そういう結果。平均点云々ではなくって、そこが実現できたのがうれしい。
これで今後に向けていい流れが生まれるといいのだが。コツコツ型の生徒には自信を持ってもらいたい。

1年生は平均点が高すぎるなあ、という印象。今回は期末なので僕は問題をつくっていないのだが、
全体的にいい点を取れたやつが多くて、結果だけ見て油断しちゃうんじゃないかって気がしてならない。
特に今年の1年生はお調子者ばっかりなので不安だ。最後の学年末でしっかりお灸を据えてやるぜ!と密かに誓う僕。


2012.11.25 (Sun.)

練習試合。自分の顧問としての能力に非常に疑問を感じざるをえないのであった。もう本当に自己嫌悪。
詳しく書くと読み返したときにブルーになっちゃうからやめておくけど、基本的に心構えができていないんだよなあ。
特に、主審できちんと判定する自信がなかったせいで試合が荒れ気味になってしまったのは大きな反省材料だ。
いろいろと大勢に迷惑をかけうる立場にいるってことを、もっとしっかり自覚せんといかんと痛感したわ。

広島がJ1を初制覇した。今年は広島か仙台かというデッドヒートで、いわゆるビッグクラブが全体的に不調だった。
僕としてはそっちの方が圧倒的に楽しめる展開なので、独自のパスサッカーと育成システムを確立した広島でも、
被災地の代表として愚直に戦い続けた仙台でも、どっちが優勝しても心の底からおめでとうな気分だった。
でもまあ冷静になればやはり、日本のサッカー全体にとっては広島が優勝してよかったかな、と思う。

得点王の佐藤寿人が凄いのは言わずもがなで(→2012.4.28)、高萩(→2012.7.21)の活躍も凄かった。
どっちも生観戦でその凄さを実感しているけど、なんというのか、自分がその凄さを実感できていることがうれしい。
生で観て「すげえな!」と思ったことが間違っていなかった、凄さがわかるレヴェルまで来たってのがうれしいのだ。
もちろんそれは選手のパフォーマンスだけでなく、チームのパフォーマンスについても言える。
広島が確立したサッカーの凄さがわかるようになって、それで広島が確かな結果を残した。二重にうれしいわけだ。

とにかく、広島の皆さんは優勝おめでとうございました。こういうクラブが優勝できるJリーグが好き。


2012.11.24 (Sat.)

部活が終わって川崎まで出て見に行ったよ、『のぼうの城』。
原作の小説を読んで(→2011.3.22)、こりゃ映画化したら面白いに決まっているわなってことで、期待していたのだ。
水攻めシーンが震災を連想させるってことで公開が1年延期になっても、オレはじっと待っていたんだぜ。

で、今ここではっきりと宣言させてもらう。「のぼう」こと成田長親役に野村萬斎は完全なるミスキャストである!
原作を読んだ僕の頭の中で、のぼうは荒川良々以外にはありえないのだ! これだけは絶対に譲れない。
そりゃあ野村萬斎は狂言に裏打ちされた確実な演技をするだろうよ。でも、荒川良々にだって同じことはできる。
そもそも、野村萬斎の顔には知性がありすぎるのだ。原作にあるような、のぼうの持つある種の「不気味さ」は出ない。
残念ながら、歳もとりすぎている。野村萬斎ののぼうは、切れ者に映りすぎるのだ。何より周囲から完全に浮いているし。
「のぼう様は野村萬斎さんしかありえません!」なんて言っている人は、おそらく原作を読んでいないのだろう。
田楽踊りのクオリティだけでしか見ていないんじゃないの? まあ荒川良々主演だったら客が入らねーだろうけどな。

それ以外のキャストについてはだいたい妥当かな、と思う。榮倉奈々の甲斐姫はぜんぜんかわいくないのだが、
まあそれはそれで現代風なしゃべり方もかえって若さを感じさせていい効果になっていると思うのである。褒めてるよ。
若さということでは、上地雄輔の石田三成もいい。三成の「青さ」がよく出ている。失礼ながら、これは予想外のヒット。
対照的に救いがたいのが山田孝之の大谷吉継で、知性はないわ声にもしゃべりにも説得力はないわで、最悪である。
あとは豊臣秀吉が市村正親だったせいか、入浴シーンで『テルマエ・ロマエ』(→2012.5.26)を思い出しちゃったよ。

内容は、大軍相手に奇跡的な勝利をおさめた忍城籠城戦を、原作に沿って実に丁寧に再現していく。
中世~近世の田園風景をしっかり感じさせる色彩を見せてくれる日常シーンと、迫力ある戦闘・水攻めシーンと、
よくつくってあるなあ、と感心させられる。忍城籠城戦を映像できっちり再現しただけでも価値があると思うのだ。
特に最後のスタッフロールでは忍城址周辺で今も残る地名をクローズアップしながら、過去の記憶と現在を重ねる。
そうすることで、大胆なフィクションを交えているとはいえ、かつて存在したドラマのリアリティをうまく補強している。

……でもまあ、それだけ、って気もする。原作の忠実な映像化。それ以上でも以下でもないかな、と。
文章を忠実に映像化することを批判するつもりはない。それはエネルギーが必要なことだし、意義のあることだと思う。
そもそも見られる映像をつくること自体、才能が必要なことだ。この作品は確かな才能できちんとつくられている。
でもそうして公式な映像、正統な映像がつくられたことで、読者に許される自由な想像力が狭められた感触もある。
(二次創作の正統性についての議論は過去ログにも書いた(→2007.11.9)。作品とは、誰のものなのかね?)
原作が存在するゆえ、原作を超えられないというジレンマ。「よく再現できている」止まりで終わってしまうジレンマ。
映画の『のぼうの城』は、娯楽作品としては期待どおりに一定レヴェルを維持している。でも、突き抜けた傑作ではない。
たとえば『幕末太陽傳』(→2005.10.222012.1.9)の場合、古典落語を原作としている、と考えていいと思う。
『幕末太陽傳』は、原作たちを踏み台にして、見事にさらなる高みに昇ってみせた。新たな物語を切り開いた。
それに対し『のぼうの城』は、そのレヴェルにはまったく達していない。単なる公式映像の枠を破るものではない。

結局、僕としては最後まで、僕の中の『のぼうの城』とスクリーンに映し出される『のぼうの城』との違いを、
うまく調整できないままで終わってしまった。変な言い方だが、いないはずの野村萬斎と山田孝之が邪魔をし続けた。
決してつまらなくはなかった。原作と同じように楽しめた部分ももちろん多い。でも、心の底からの納得はできなかった。


2012.11.23 (Fri.)

本日は勤労感謝の日なのである。毎日きちんと勤労している僕としては、しっかり休まないといけないのである。
で、そんな僕が休日をどのように過ごすのかというと、当然、サッカー観戦なのである。そう、J1昇格プレーオフ。
大木監督率いる京都が国立競技場で行われる決勝に来ると信じてチケットを購入しておいたのだが、
なんと6位の大分に0-4で敗れてしまった(→2012.11.18)。これには本気でがっくりきたのは過去ログのとおり。
でもまあせっかくだから史上初のプレーオフでのJ1昇格をこの目で見届けてやろうと思い、国立競技場へ。
天気がよければ自転車でスイスイと乗り付けたのだが、降ったりやんだりのぐずついた天気で電車に乗ることに。
もう、何から何まで気に入らない展開である。千葉と大分の対戦だから派手な試合になりそうもないしなあ……。

チケットを買った時期が比較的早かったからか、今回のメインスタンド指定席は非常にすばらしい位置だった。
真ん中よりもちょっとホーム(大分)寄りで、なんと前から3列目。おかげでしっかり臨場感を味わうことができた。
ちなみにさすがにゴール裏はどちらも濃いサポーターによってびっしり埋め尽くされている。まあ気合入るわなあ。
メインスタンドとバックスタンドは、地の利ということで千葉サポが多い。でも大分のタオルマフラー組も少なくはない。
思った以上にJ1昇格プレーオフは人気があるようで、天気が悪い中でもしっかりと客は入っているのであった。

  
L: 試合開始直前、整列する両チームの選手たち。うーん、正直なところ、京都の選手たちにここに立ってほしかった。
C: 気勢を上げる5位・千葉のゴール裏。でも「ALL YOU NEED IS FOOTBALL」って言葉は決戦の舞台にはあまりふさわしくないね。
R: こちらは6位・大分のゴール裏。不利なレギュレーションを引っくり返し続けてのJ1昇格なるか。

電光掲示板では両チームの映像をそれぞれ流して客席を盛り上げる。「日本一残酷な、歓喜の一戦」とのことだが、
まさにそのとおりだ。会場が中立地・国立競技場ということもあって、いつものJ2の雰囲気とは何かが異なっている。
どこか張りつめた空気が客席にまで漂っているのがわかる。勝てば天国、負ければもう一年地獄。まるで『蜘蛛の糸』だ。
ちなみに大分の映像では「借りは返した」という文字が出てきて思わず大爆笑してしまった。大一番でよくやるわ。
大分は6億円の負債を抱えてプレーオフ進出が危ぶまれたが、無事に完済して国立競技場までたどり着いたのである。
借金返済の原動力は企業の支援だけでなく、サポーターの募金も非常に大きな要素となった。こりゃ負けられないよね。

試合が始まると、基本的には千葉がボールを保持してゲームを支配する感じで進んでいく。
というよりは、失点できない大分が受けにまわった印象である。千葉が大分よりも上位でレギュラーシーズンを終えたので、
90分でドローの場合には千葉がJ1に昇格することになるからだ。大分は攻めるしかないのだが、リスクが大きくのしかかる。
パスをつないで攻める千葉に対して、大分は3バックだけでなく中盤以降もべったり引いた形になって守りに徹する。
もともと大分のサッカーは後ろの選手が追い越して攻めることを好まない印象があるのだが(→2011.7.31)、
攻めて隙ができるのを恐れているのか、前線の選手以外は上がるのが消極的で遅い。だから千葉にボールを奪われると、
すぐに押し込まれてしまう。でもゴール前に人数をかけてブロックをつくってペナルティエリアには絶対に相手を入れない。
逆に大分は攻める際には自陣の深い位置から始まるカウンターになる。そのためFWのドリブルで距離を稼がざるをえない。
でも中盤以降の上がりは遅いしポジションチェンジもないしで、攻撃の連動性はまったくない。すべてが単発なのだ。
3-5-2のフォーメーションがそのままカゴのように上下する攻撃も、そのカゴが後ろに重くて機能不全に陥っている。
千葉はお得意の複数で素早く囲む守備(→2012.7.8)からサイドにボールを出して、深い位置まで攻め込んでいく。
でも大分は集中して守ってゴールを割らせない。特にGK丹野がファインセーヴを連発して千葉の勢いを殺いでいく。

  
L: 右から左から、サイド攻撃を志向する千葉。対する大分はべったりとゴール前を固めて守りきる。写真を見れば一目瞭然。
C: 大分の攻撃もサイドが中心。しかしボールホルダーに対し、千葉は複数が素早く対応してボールを出させない。
R: 前半は千葉が何度も決定機をつくった。しかしGK丹野が集中して守り、千葉の攻撃を根気よくしのぎ続ける。

大分の田坂監督はJリーグでも屈指の戦術家なのだが、僕はずっと「大分は攻める気あるんか」と思いながら観ていた。
もちろんどんなチームも90分間攻め続けることなど不可能で、ゲームの流れを読んで攻めきるポイントをつくる必要がある。
田坂監督はこの押し込まれている状況をどこで解消するのか、ずっと気にしながら千葉のサイド攻撃を眺めるのであった。
なお、この試合で強く感じたのは、なんといってもミスの怖さだ。ふだんではありえないイージーミスがいくつか出て、
それがピンチにつながる光景が目についた(特に大分)。大舞台でも平常心でプレーできるかが勝負の分かれ目なのだ。
若い大分を率いる田坂監督はその点をふまえたうえで、試合にフィットしきれずにミスが多い序盤はあえてリスクを冒さず、
慣れた後半に勝負を仕掛けるつもりだったのかもしれない。千葉は攻勢に出るが、スコアレスドローでハーフタイムを迎える。

さすがに後半に入って、大分の動きが少し良くなった。でも全体的に千葉ペースで進む現実は変わることなく、
大分は押し込まれ気味の時間が続く。0-0のまま試合は進み、千葉の攻める理由は砂時計とともに少しずつ減っていく。
73分、大分はFW林を投入。なおこの試合で大分は村井をスタメンに起用していた。林も村井も千葉でプレーした選手。
特にオシム監督時代に活躍をしており、千葉サポにしてみればブーイングで迎えながらも複雑な感情にならざるをえない。

試合はさらに進んで残り5分を切る。しかし大分は落ち着いていた。淡々と千葉の攻撃をしのいでカウンターをかける。
逆に千葉の立場はどんどん難しくなっていく。無理に攻めると隙ができる。得点しなくても、このままでJ1に昇格できるのだ。
しかし大分が誘う。攻めてこいよ、と自陣で千葉の選手を待ち構える。いま振り返ると、あれはそういうサッカーだったのだ。

選手交代で一瞬の隙が生まれた。大分が84分にFW高松を入れたことで、千葉は大分のシステム変更を探ることになる。
そして86分、千葉がFW荒田を投入した直後のことだ。大分のシステム変更にまだ対応を決めかねていたところに、
自チームにFWの選手が入ったことで、さらにピッチ内の意識のズレが広がった。そんな中、中央の森島にボールが入り、
森島は千葉のディフェンスラインの裏にワンタッチでボールを送った。オフサイドラインぎりぎりで林が飛び出し、
GK岡本と1対1の場面ができあがる。林はボールを押さえた次の瞬間、ループシュートを放ってGKの頭上を抜いた。
まさに乾坤一擲、だった。林は京都時代、大分をJ2に降格させたゴールを決めた男だ。その男が、今度は古巣を相手に、
二重の意味での恩返しゴールを決めてみせたのだ。青いスタンドは沸き返り、黄色いポンチョは沈黙する。天国と、地獄。

アディショナルタイムは実に5分。千葉は204cmのオーロイを投入して空爆作戦を始めようとするが、
当のオーロイがぜんぜん競らないし、その周りの選手も大分守備陣に邪魔をされて、得点の匂いはまったく漂ってこない。
大分はここまで集中を切らすことなく守るサッカーを徹底していた。だから同じことを繰り返せばいいだけのことだった。

  
L: 後半も千葉が攻勢に出る。しかし粘る大分から点を奪うことができない。そうして時間だけが過ぎていく。
C: 大分のFW林がループシュートを放った瞬間。コーナーフラッグの右上に浮いたボールがあるんだけど、わかります?
R: 審判の笛が鳴って大分のJ1昇格が決定。倒れ込む千葉の選手と、歓喜に沸く大分の選手。ピッチには天国と地獄が潜んでいる。

こうして、来シーズンJ1に昇格する最後の1枠は、レギュラーシーズン6位の大分トリニータに決定した。
ショックで立ち上がることすらままならない千葉の選手たちとは対照的に、大分の選手たちは喜びを爆発させる。
正直なところ、僕には千葉の選手たちがそんなにへこむ理由がわからない。もともと千葉はシーズン5位だったんだから、
いい夢見させてもらったぜ、ってことでサバサバしていてもいいんじゃないかと思うのだ。そんなの、京都の方がショックだぜ。
その辺に申し訳ないけど僕は、千葉の傲慢さ(→2011.8.212012.7.8)を感じてしまう。名門という意識が強すぎて、
相手に十分な敬意を払えない。「自分たちはJ1にいるべき存在なんだ」なんて具合に、何か勘違いをしとりゃせんか。
もちろんJ1は甘くないけど、J2だって決して甘くない。去年の天皇杯はその事実を世に知らしめたではないか。
ただただ安易に結果だけを求めて迷走するクラブに栄光はないのだ。千葉を見ていると心からそう思う。

  
L: プレーオフの勝者ということで、まるでリーグ戦かカップ戦を優勝したかのように喜ぶ大分の皆さん。6位だぞ。
C: 喜ぶ田坂監督と大分の選手たち。きわめて賢い戦いぶりをみせたと思うけど、おめでとうだけど、6位だぞ。
R: 田坂監督を胴上げする大分の皆さん。わかっちゃいるとは思うけど、6位だぞ。

まあ今年のJ2はプレーオフに参加した3位から6位までがすべて勝ち点1差だったわけだから(2位も勝ち点1差だし)、
6位がJ1に昇格するという結果にもそれほど違和感はない。決められたレギュレーションで勝ったやつが強いのだ。
でもここまで派手に喜ぶのは、ちょっと違うと思う。まあそれはあくまで個人の価値観だから、どうでもいいけどさ。

 
L: 敗れた選手たちをエールで迎える千葉のゴール裏。  R: 歓喜の大分ゴール裏。J1でもがんばってほしいと思う。

今年から導入されたJ1昇格プレーオフだが、シーズン終盤まで緊張感を維持できて、評判は非常によろしいようだ。
確かにこの緊張感と高揚感はとても独特で、3位ながら京都が敗退したことはたまったもんじゃないんだけど、
純粋な日本サッカーのファンとしては、かつてのJ1・J2入れ替え戦に代わるイヴェントとして存分に楽しめる。
その事実をこの目で実際に確かめることができたのはよかった。わざわざ雨の中、観戦するだけの価値はあったね。


2012.11.22 (Thu.)

本日が英語のテストの出番。今回は地味に難易度を下げたつもりなのだが、果たしてどうなったか。
で、今日も午後に休暇を申請していたので、今度こそ早めに帰る。採点とかノートチェックとか、華麗に先送りなのだ!

いったん家に戻って着替えると、そこからはひたすら日記であります。過去ログ改修と最近の分を書くのと2本柱。
2005年の過去ログ改修はどうにか11月まで来たので、この3連休を利用してなんとか仕上げてしまいたいところだ。
この改修作業が終わると管理者の僕としてはかなり気分的に楽になるので、とにかく早くけりをつけたい。
内容的にもレヴューを中心に充実しているので、早いところ表に出して、この日記の厚みを本来のものに戻したいのだ。
まあその分だけ今年のログが遅れていくのも事実なのだが、後顧の憂いを断つってことで許してつかぁさい。
本当に地道にやっとります。ここんところ、部屋の片付けかログの片付けか、どっちかばっかりなんだもんなあ。


2012.11.21 (Wed.)

午後をまるまる休暇にしていたのだが、テストづくりが遅れてしまい、結局3時過ぎまで職場に残るのであった。
問題は昨日の段階でほぼすべてできあがっていたんだけど、割付(レイアウト)で凝るもんでこうなっちゃうのね。
テスト監督をしながら、もう、午後はどれだけじっくり遊んでやろうかウヒヒと思っていたんだけどねえ。
で、家に戻っても今さら遠出する気になれず、日記の過去ログ改修作業にひたすら専念。2005年、ぜんぜん進まねえ!


2012.11.20 (Tue.)

期末テスト初日……なのだが、英語の出番は3日目なので本日はお休みをいただいたのであった。
テスト前の休みといえば旅行!で、生徒たちもすでに僕のその習性は知っているのだが、……だが、なんと、
今回はどこにも行っておりませーん。昨日の月曜に授業があったせいで、土日と休みを連結できなかったから。
それにテスト期間中は試験監督もせにゃならんので、休めるのはいいとこ一日だけ。
これじゃ遠出なんてする気は起きないよ。……というわけで、おとなしく都内を自転車で走りまわって過ごすのであった。

まずは新宿の東京都庁。いいかげん、教員免許の更新を申請しないとクビになってしまうのだ。
あらかじめコツコツと準備しておいた書類をまとめて提出。手数料が3300円とかふざけんな!
教員免許の更新は、金がかかるし時間は取られるしで、メリットは何ひとつとして存在していない。
あらゆる負担のしわ寄せはぜんぶ生徒に行くのにね。安倍晋三という物事を短絡的にしか見られないクソバカのせいだ。
もう本当にあのバカをなんとかしないといけないわ。日本国民はいいかげん、安倍の浅はかさに気づけ。目ェ覚ませ。

そんな怒りを腹の底に貯め込みつつ、国道20号・新宿通りで半蔵門へ。そこから皇居の南端に沿って有楽町に突入。
これはこないだのスカイバスのルートと一緒なのだ(→2012.11.3)。平日のスカイバスはスカスカでしたぜ。

有楽町ではまずFREITAGのオフィシャルショップ(→2011.11.5)を目指すが、今回もまた迷ってやんの(→2012.9.1)。
それで勢いあまって八重洲まで出ちゃったので、次に予定していたことを先にやってしまうことにした。
2008年、会社を辞める前に中国地方から九州にかけて大旅行をしたのだが、その際に通った路線がわからない。
長崎本線で旧線に乗ったかどうかがわからないのだ。これじゃあ、ほら、乗りつぶしのデータがはっきりしないじゃん。
鉄かどうかはまあとにかく、いいかげん白黒をつけないといけないのだ。というわけで、八重洲ダイビルの地下へ行く。

そこにあるのは、日本交通公社の「旅の図書館」。広くはないのだが、旅に関する書籍がそろった施設なのだ。
そしてここでは時刻表のバックナンバーを見ることができるので、わざわざ訪れたわけ。開館は平日のみで17時半まで。
こういう機会でもないとなかなか行けないのだ。というわけで、カウンターで2008年4月の時刻表をリクエスト。
現物を渡されたのはいいが、ご存知のとおり僕は時刻表を読めない。でもまあ、そこは根性で調べていく。
持っていたMacBookAirで過去ログをあたり、それをもとに類推していく(→2008.4.272008.4.28)。
結果、「僕は長崎本線の旧線には乗ったことがない」と判明。いつか長崎にリヴェンジできるといいなあ、と思う。

すっきりしたところで有楽町に戻り、今度こそFREITAGのオフィシャルショップへ。新製品のトートバッグをチェックしていく。
店員の兄ちゃんにいろいろ説明を聞く。そしたら背負っていたREXを「かっこいいですね」と褒められた。
REXというのはお値段的にFREITAGに魂を売っていないと手が出ない代物だからね。まあお世辞でもうれしいぜ。
ちなみに潤平はオフィシャルショップで柳家花緑を見たことがあるそうな。花緑さんも集めているんだってさ、FREITAG。

有楽町ではもう一丁、無印良品に用があるのだ。新しいメガネを買ってしまおうというのである。
いま使っているメガネはいいかげん古くなってフレームが劣化しており、非常にみっともない状態なのだ。
レンズも実は、富士山で落としたときに(→2012.7.15)いい位置にキズが入っちゃって、困っていたのだ。
そんなわけでチタン製のメガネを物色。縁の太いアルミ製のものあったが、なんだか業界人っぽいしチタン好きだしで、
無難なデザインのものにした。高校時代に使っていたような真ん丸なチタンフレームもあったので少し迷ったが、
まあそれはもうちょっと歳をとってからにしておこうと思う。とりあえず今回はきわめて無難なものでいくのだ。
それにしても無印良品の10%オフは最高ですな。ついつい一気に買い物をしてしまうわ。最近、無印づいとる。

その後は神田まで出て、バーガーキングでがっつりお昼をいただきつつテストをつくってもうヘロヘロ。
本当は秋葉原に行って中古のゲームミュージックCDあさりをしようと企んでいたのだが、明るいうちに帰ることにした。
いったん家に戻ってから、自由が丘の無印でやっぱり買い物。部屋の片付けが進むと同時に無印化が進行している……。


2012.11.19 (Mon.)

明日から期末テストということで、授業はだいたい演習・自習モードとなっている。
僕の場合には「どの教科でも自習OK、オレへの質問もOK」ということでやっているわけだが、
理科の質問を受けて、衰えを実感させられてがっくりきてしまった。いや、正解はきちんと出せたのだ。
でもそこに至るまでの思考プロセスがまるっきりシャープでなくって、正解できても悔しくってしょうがない。
やはりふだんからきちんと訓練しておかないと、衰えてしまうものなのである。オレ様って特別、ではないのよねー。

放課後には2年生から要望があったので、それに応えて補習。
前に教えたことをもう一度教えるのは面倒くさいこと極まりないんだけど、やる気のあるやつはフォローせんとなあ。
そういう正義感というか義理人情というかでがんばって動く。でもいざ始まってみると、生徒のやる気は最高潮で、
教える立場としてはそれにつられてエネルギーが出るわけで、非常にいい感触で終わらせることができた。
あとはこれが点数という形できちんと成果として現れることを祈るのみである。頼むぜ本当に。


2012.11.18 (Sun.)

J1昇格プレーオフのトーナメント1回戦(でも4チーム参加だから準決勝って言えばいいの? なんだか複雑)が行われた。
レギュラーシーズン3位の京都サンガF.C.は6位の大分トリニータと、4位の横浜FCは5位のジェフユナイテッド千葉と対戦。
このプレーオフはかなり特殊なレギュレーションになっている。それぞれの試合は上位チームの本拠地で開催され、
引き分けの場合には上位チームが決勝に進出する。つまりホームの上位が圧倒的に有利な状況で戦うことになるのだ。

で、フタを開けてみたらホームがどっちも0-4で負けるってどうよ。いちばん想像のできなかった展開が実現してしまった。
僕は詳しい戦いぶりを見ていないのでなんとも言えないのだが、京都と横浜FCがどちらもここまでの大差で負けるとは、
ちょっと信じがたい。何が起きたのかまったく想像できない。そんでもって京都のJ1昇格が失敗したことに本気でがっくり。
実はすでに僕は、京都が決勝に進出することを信じて、国立競技場のチケットを押さえてしまっているのである。
まあ別に千葉と大分の対戦でも喜んで観に行くけどさ。でもやはり、大木さん率いる京都の昇格決定を直接見たかった。
当該チームのサポーターでない人にはめちゃくちゃ面白いんだろうね、これは。昇格プレーオフには魔物が潜んでいる、と。
J1・J2の入れ替え戦も熱かったが、それに匹敵する魅力的なコンテンツになりうるんだろうな、きっと。
まあとりあえず、いちサッカーファンとして、5日後の聖地・国立での決勝戦が面白い試合になることを期待しましょう。


2012.11.17 (Sat.)

本日は土曜授業。こっちもだいぶお疲れモードなら、生徒もだいぶお疲れモード。
体調を崩して休んでいる生徒が多くて、せっかくの授業がイマイチ中途半端な感じになってしまう。
特にデキのよろしくない生徒にとって授業は量より質であるべきなのだが、無理に量を増やしてお互い余裕がない。
でも世間一般の皆さんは、その辺の実像をまったく見ようとしないのが困る。みんな思考が非常に短絡的なのだ。
物事を解決する特効薬なんてこの世には存在しないものだ。副作用を気にしながら、微調整を続けていくしかない。
余裕のある生活が教養と誇りのある生活につながる本質を、大半の日本国民が見失ってしまっていることが悲しい。

帰りの時間帯になって雨が降り出して、びしょ濡れで帰ることになってしまった。泣きっ面に蜂である。
懸命にやるだけやっても批判され、さらに余裕のない仕事を強いられる。おまけに給料も削られる。
教員ってのは本当に報われない商売だ。教育現場を荒廃させてんのは、短絡的な結論を求めるお前ら自身なんだぜ?


2012.11.16 (Fri.)

ウチの学校を舞台にかなり大きめな研究会があり、その関係でけっこうドタバタ動いてヘロヘロである。
教員って本当に頭の悪い生き物だなあと心の底から思うのはこういうところで、やたらと「研究」したがる。
(研究授業がいい例だ。自己満足に子どもを付き合わせる最悪な習性である。→2009.4.222009.6.232012.6.6)。
そんなもん、本来は何ひとつ必要ないのだ。教員ってのは十分な教養でもって子どもに生き様を見せつければそれでOK。
自己満足のくだらない研究会に割いている時間などない。そんな暇があったら本やDVDで勉強したいことが山ほどある。
でも教員は、集まって現状を改善する方策を考えないといけないという強迫観念にかられている生き物なのだ。
それで時間と労力をかけて研究会を開き、仕事をした気分になっている。下手の考え休むに似たり、って言葉を知らない。
まあ中学校はまだ余裕があっていいが、小学校の先生方のクソマジメさと視野の狭さは思わず鳥肌が立ってしまうほどだ。
こんなんだから世間から教員がバカにされるんだよ、と呆れるのだが、そんな僕は圧倒的に少数派なのでどうにもならない。
早く教育学が禁止されて教育学部が廃止されて教員免許がなくなる世の中が来てほしいものだ(→2012.2.13)。
真実は逆説の中に潜んでいる。


2012.11.15 (Thu.)

『東のエデン 劇場版』。テレビシリーズ(→2012.11.9)の続きにして完結編である。
といっても、このログではひとつにまとめているけど、劇場版は実際には「I」と「II」の2本あるのね。
テレビで終わらなかったこのアニメは、映画2本目にしてようやく完結。どんだけ引っぱるんだか。

いつもならあらすじを滔々と書いていくところなんだけど、クソつまんない話で面倒くさいからやんない。
もともと基本的な姿勢がどうあがいても面白くなりようのないものなので、映画になってもダメなものはダメ。
劇場版ではいよいよ本格的にセレソンどうしの戦いなるが、滝沢朗が行方不明なところからスタートしている時点で、
欲張って崩壊したテレビ版の反省がまったく生きていないのが明白。どこまでこの監督はバカなのかと呆れ果てた。
もし映画館で見ていたら、ブチ切れて前の席を蹴り飛ばしていたかもしれん。救いがたいクオリティだった。

なんなんですかね、このくだらなさは。制作者側の描きたいテーマが、すごく醜い自己弁護にしか見えない。
好意的に解釈すれば「人的資源としてのニートをネットを介して活用すること」になるのかもしれない。
でもすごく視野が狭い。主人公の生きている世界がめちゃくちゃ狭い。狭い世界での自己満足でしかない。
おたく的要素のあるやつが活躍すること自体は別にいいんだけど、それが一般市民に波及する様子がお手軽すぎる。
ネットのスラングでは動かしえない領域が、確かにあると思うのだ。そう、これは言語の問題でもある。
人を動かす言語とは、政治の場で通用する言語のことだ(参考までに「言説編成」 →2001.11.92001.12.7)。
そこまできちんと踏み込んで考えることなく、ネットのスラングのレヴェルで物事を解決しようとしている。
これがもの凄く気持ち悪い。「狭い世界での自己満足」「醜い自己弁護」なのは、これが原因なのだ。
結局、この話はおたくの言語感覚で強引に物事を解決するために、どうしても莫大な資金を必要とすることになるわけだ。
さっきも書いたが、そういう基本的な姿勢が間違っているから、どうにもならない。駄作にすらならない。時間の無駄だ。


2012.11.14 (Wed.)

サッカーW杯・アジア最終予選のオマーン戦。

前半20分に日本が先制。今野の浮き球のパスに抜け出した長友が追いついた。これをきれいに中央に入れて、
転々とするボールを清武が蹴り込んでゴール。長友はやっぱ凄いなあ、と感心させられた得点シーンだったわ。
日本はその後も攻めるがオマーンは粘っこく、決定機をつくられてしまう場面もあっていかにもアウェイな感じ。
後半の77分にはカウンターからゴール前に迫られたところで吉田に当たった相手が勝手に倒れてFKの判定。
絶対にシミュレーションだろと思うのだが、それもやっぱりアウェイな感じ。これがグラウンダーでスルッと入ってしまって同点。
このままドローかと思ったら、89分に左サイドを抜けた酒井高のクロスを遠藤がジャンプして流し、岡崎が押し込む。
ゴートクは最後の最後で実にいいプレーをしてみせた。日本代表にとって、ゴートクの存在は非常に心強いですな。

そんなわけでけっこうスッキリとした気分で試合を見終わった。それにしても長友といい遠藤といい岡崎といい、
一流のサッカー選手の運動神経ってのはとんでもないものがあるな!と舌を巻くしかなかったわ。


2012.11.13 (Tue.)

今日は諸事情により、6時間フルスロットルで授業なのであった。いや、もう、疲れたなんてもんじゃない。
いつも授業が多くてヒーヒー言っているんだけど、今日は本当にヘロヘロになった。よくがんばったよ、オレ。

ネットのニュースで見たんだけど、山梨大学が授業をぜんぶ英語化するんだってさ。
国立大学でも生き残りを賭けてそういう独自性を出していかないといけない時代になったようで。
学生のレヴェルからしてどうなんずら、と思うのだが、まあ、やりたきゃやれば?って感じ。

熊本の五高記念館(→2011.8.8)を訪れた際、ひどく印象的だったのが、かつての教室を再現した部屋だ。
数学の授業なんだけど、黒板には英語が書かれていた。つまり、当時は英語で数学を教えていたってことだ。
そして今年訪れた北海道大学(→2012.8.21)でも、かつて札幌農学校時代には授業は英語で行われていたそうだ。
それで、エリートとして英語が使える人材を教育していたという。一見、なんだか現代でも通用しそうに思える話だ。

でも、これらのエピソードを聞いて、英語での授業=高度な教育と考える人は、とっても短絡的で単細胞だと思う。
実際のところは、「当時は大学レヴェルの講義内容を日本語で教えることができなかった」ということではないのか。
そしてさらに、真実はこういうことだろう。「講義を母国語である日本語で行うことは、日本の大学の悲願だった。」
日本の学校が英語で授業をすることは、植民地にある学校が宗主国の言語で講義をすることに等しかったのではないか。
外国人の教官をわざわざ招かなくても高度な内容の講義を日本語で行えるようになったということは、すなわち、
高等教育が日本に十分に浸透した結果であったはずだ。むしろ本来、大いに誇っていいことであると思うのだが。

いちおうあらためて僕の立場を書いておくと、大学教育については「どっちでもいい」である。
上記のように、日本語で高等教育を受けられることの意義を噛み締めるべきとは思うが、英語での授業には反対しない。
僕が危機感を持っているのは基礎教育の段階における英語の侵入であって、大学なら別に、やりたきゃやれば?である。
ただ、日本人どうしのコミュニケーションで日本語を使わずに英語を使うことは、これは不自然かつ異常であると思う。
その辺のことをもっと深く考えてから結論を出してほしい。少なくとも、完全に英語化するのは本末転倒に感じるが。

盲目的に英語を受け入れるのではなく、日本語を世界で通用する言語として海外へ積極的に売り込んでいくこと、
それが本当に「国際的な姿勢」であると僕は思っている。インド・ヨーロッパ語族にカウンターパンチをかまそうぜ。


2012.11.12 (Mon.)

『俺たちに明日はない』を見てみた。ボニー&クライド物ではいちばん有名な作品だ。

感想。とにかくつまらん。これのどこが名作なの?と、最後まで首を傾げ続けた。
ボニクラのふたりが出会うシーンをわりあいさりげなくつくったのが狙いだったのかもしれないけど、
なんだか淡々と進んでいってしまった感じ。その後の仲間が増えていく描写も雑で、まったく魅力を感じない。
最初から最後までひたすら怒鳴るだけで終わった『欲望という名の電車』(→2005.5.21)を少し思い出した。

題材がつまらないのだ、結局。人に迷惑をかけるだけの連中が主人公で、うれしいはずがないのだ。
描かれるのは生産性のまったくない日々、暴力、そして無教養。逃げまわるだけでロードムーヴィーですらない。
それが当時の彼らのリアリティだったのだ、と言われればそれまでだけど、何もプラスは残らない人生。
そこに有意義なドラマを見出すためには、「悪が悪となった理由」がどうしても必要になるのだ。
社会に挑戦状を叩き付けた彼らの思考回路、そうなった理由、それが抜け落ちてしまっては、意味がない。
意味なんていらない、彼らの社会への反抗を描けばそれでいい、というのは、浅い価値観であると思う。
「時代の雰囲気」という安易なキーワードで片付けてしまっては、人間の想像力は永遠に発揮されない。
ボニーとクライドは世界を敵に回してでも愛を貫いたから今も語り継がれる存在になったのか?
そんな虚数空間で繰り広げられた愛情を、現実を生きなければいけない僕らにどう評価しろというのだ。
感情移入するためには、根拠が必要だ。僕たちの心の奥底で共鳴するものが必要になるのだ。
でもこの作品中のボニクラに、それを見出すことが僕にはできなかった。まったくわかりあえなかった。

ラストシーンのブツ切り感はすごかったけどね。やるだけやって、最後は散って。余韻も残さない。
この先、この作品のボニクラの記憶が僕の人生に影響を及ぼすことはないだろう。そんなものに価値は見出せない。


2012.11.11 (Sun.)

今年のJ2がいよいよクライマックス、最終節である!
できればどこかのスタジアムへ観戦に出かけたかったのだが、うまく予定が組めずにあきらめた。
しょうがないので、結果を楽しみに日記を書きに出かけて、戻ってきてからネットで情報収集をすることにした。
まあ個人的には京都がきっちり勝って2位で自動昇格を決める展開を大いに期待しているわけである。

で、帰ってきて結果をチェックしてみたら……湘南が逆転で2位に入って京都が3位! ぎゃー! まくられた!
ダヴィのおかげでぶっちぎり優勝を決めた甲府(勝ち点86)はおいといて、2位からプレーオフ圏内の6位まで見てみると、

2位・湘南(勝ち点75)
3位・京都(勝ち点74)
4位・横浜FC(勝ち点73)
5位・千葉(勝ち点72)
6位・大分(勝ち点71)

なんと見事に勝ち点の差が1ずつで順位がついているんでやんの。今年のJ2の大激戦ぶりは尋常じゃなかったのだ。
各クラブが本当に紙一重の差でしのぎを削り合っていたことが、数字ではっきりと証明されたように思う。

それにしても、京都が3位で自動昇格を逃してしまったことが本当に悔しい。去年までなら自動昇格できたのに……。
しかしこれはむしろ、湘南の粘りを評価すべきであるように思う。湘南に比べると、京都はだらしない場面が多かった。
象徴的なのは、なんといっても開幕戦(→2012.3.4)だ。前からガンガンにプレスをかけてショートカウンターを狙う湘南に、
京都は最後の最後で逆転負けを喫した。湘南がその積極的なサッカーを1年間貫いたということも衝撃的だったのだが、
この開幕戦の展開が、今シーズンのこの結果を恐ろしいほど的確に予言していたように思えてならないのだ。
最終節で3位に沈んで自動昇格を逃したショックは凄まじく大きいが、京都は切り替えてプレーオフに臨むしかない。

それ以外に今シーズンのJ2でのサプライズは、岡山と松本の躍進だろう。岡山はまさに「継続は力なり」で、
地道に続けてきたことがはっきりと結果を生んだシーズンとなった。松本はやっぱり反町監督の采配が大きいってことか。
岡山も松本も共通していることは、街の持っている潜在能力がクラブの運営につながったってことだと思っている。
兵庫と広島に挟まれた岡山はどこか損をしてきた印象があるのだが、街への誇りとクラブへの誇りが重なりだしたと思う。
松本の場合は言わずもがな(→2011.4.30)で、甲府も含めて、サポーターの支える力が結果を生む好例となっている。

最後に、最下位となってJFL降格の可能性が発生した町田について。
やはりJリーグは甘くなかった、ということか。ホームタウンは町田市だけだしスタジアムの交通の便は恐ろしく悪いしで、
サポーターがクラブを支える条件はけっこう厳しいと思う。でも、サッカーどころとしての矜持が試されている、
そう考えて誇り高くやっていくしかないだろう。町田がJリーグに復帰できるかどうかは、マクロな目で見た場合、
日本のフットボール文化全体のレヴェルが試されている、と考えられるはずだ。文化が根付いていれば、きっと復帰できる。

まだまだ足りない部分はあるが、J2のレヴェルは確実に上がっている。そう確信できるシーズンだった。


2012.11.10 (Sat.)

部屋の片付けを地道に続行中なのである。本日は新たな本棚とユニットシェルフが届いたので、
古い本棚との入れ替え作業を行った。朝のうちに自由が丘で髪の毛を切っていたのでよけいにさっぱり。
休日の午後特有の穏やかな日差しの中、コツコツと作業を進めていく。第2期工事もなかなか快調である。

反省してみた結果、旅行で集めたパンフレット類を整理しきれていなくて部屋がカオスになっている、と思い当たった。
ユニットシェルフに大型の本や冊子類をまとめていったのだが、ここにパンフレットもファイリングしていくことに。
自分の中ではわりと大胆に取捨選択して、全体の分量を1/3くらいに減らしながらまとめていく。
時間がもったいないので、ベッド下の空間にMacBookAirを持ち込んでDVD鑑賞をしながら作業した。

  
L: ベッド下でDVD鑑賞しながら作業をしているところ。まだまだ散らかっている箇所が目立ってお恥ずかしい。
C: 作業スペースはこんな感じ。なんかのコクピットみたいだな。  R: ベッド下の本棚は今回こうなっております。

しかし思うのは、部屋の模様替えというのはキリがないということ。まるで、終わりなき新陳代謝である。
あと、オレの部屋にはマンガが多い。納得のいった名作マンガって、買うのはいいけど手放せないのだ。
つまりそれだけ日本には名作のマンガが多いってことなのだ、ということにしておく。困ったものである。


2012.11.9 (Fri.)

『東のエデン』。
あの『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』(→2005.3.6)の神山監督によるオリジナル作品ってことで当然、
大いに期待してDVDを再生する。ちなみにキャラクター原案は『3月のライオン』(→2011.3.21)の羽海野チカが担当。

いきなりヒロインがホワイトハウスに物を投げ込もうとする。まずここでこっちは「そりゃマズいだろ」と、気が気じゃない。
ところがそれ以上の展開が待っていた。なんと、主人公がそこに全裸で登場するのだ。おまけに記憶喪失。
彼は手にしていたケータイの助けを借りながら移動、追いかけるヒロイン、そうして物語がどんどん進んでいく。
第2話からは日本に舞台を移し、スペシャルなケータイを持つ主人公の謎に迫る。以後、謎に迫りつつ話は広がる。

全11話を見終わって、なんじゃこりゃ、と呆れてしまった。もともとこれはフジテレビの深夜枠「ノイタミナ」のアニメで、
こんなんで終わっていいのか?と疑問に思っていたら、この後に劇場版があって、それで完結ってことらしい。
僕は『イヴの時間』(→2010.3.21)と同じパターンで、劇場版は再編集だと思い込んでいたのだが、違うようだ。
となると話は別なのだが、でも広げた大風呂敷をテレビの枠内でたたもうとしない姿勢は絶対に受け入れられない。
たとえ映画のデキがすばらしいものだとしても、僕はこの作品を評価したいとは決して思わない。それが結論。

しょうがないので、とりあえずはテレビの全11話に限った範囲でレヴューを書いてみる。
感想は一言。つまらん。顔を真っ赤にして怒鳴ってではなく、無機質な表情で一言、つまらん。そう言いたい。
冒頭の食いつかせ方はまあ上手かった。でも話が進むにつれて、設定をコントロールしきれずに混乱が深まっていく。
原因は簡単だ。たった11話に「記憶喪失の主人公の自分探し」と「100億円で日本を救う方法」の両方を混ぜたこと。
いくらなんでもそりゃ無理だ。主人公が自らの正体・行動を暴いていく謎解きは、明らかに過去へのベクトルである。
だがセレソンとして託された100億円の使い方は、これは完全に未来へのベクトルなのだ。180°逆方向にあるわけだ。
しかも、セレソンはほかに10人いる。中盤以降はセレソンどうしでの駆け引きまで始まってしまい、話は拡散する一方。
最終的に主人公が自ら記憶を消した理由は明かされるものの、ぜんぜん釈然としない。で、そのまま無理やり終わる。

解決策は……そうだなあ、主人公を記憶喪失にしないで、未来へのベクトルに集中させることしかないだろう。
記憶喪失というミステリ的要素で観客受けを狙ったんだろうけど、解決したところでようやくスタートラインに立つだけだ。
たぶん100億円の賢い使い方を提示するだけで十分面白くなるはずで、わざわざマイナスから始める必要はない。
さらに言えば、主人公を滝沢朗ひとりに絞るのではなく、セレソンどうしの群像劇にした方が、なお魅力が増しただろう。
まあそもそも、「100億円で日本を救え、さもなくば死」という発想じたいが非常に低レヴェルなのである。
作品が面白くなるかどうかは、登場人物の人間性を豊かに描けるかどうか、究極的にはその一点に尽きる。
金で解決するという安易さと、できなければ死という安易さのダブルパンチで人間性を掘り下げられるはずがない。
この話に登場するキャラクターも、救う対象となる日本も、現実の存在に比べれば実に薄っぺらい。

結局、神山監督は『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』の第1シリーズがピークだった印象。
『2nd GIG』で大幅にスケールダウンして(→2005.9.6)、『東のエデン』ではこの体たらく。残念である。


2012.11.8 (Thu.)

過去ログとの格闘になんだか疲れてしまったので、今日はサボると決めた。
DVDも見る気分じゃないし、ってことで、久しぶりにWindows95版の『信長の野望・武将風雲録』をプレー。
本当はコーエー25周年記念のPC-9801版がやりたいんだけど、トロイの木馬が検出されてしまい遊べないのが切ない。

もはやふつうにプレーする気などないので、本能寺の変イベントを起こしてシナリオ3を選ぶ。そんでもって真田家でプレー。
まずは東北地方の大名を脅迫しまくって全員傘下に入れる。真田幸村の攻撃力があればわりと簡単にできるのね。
金が集まったら一等茶器を買って褒美リレーで忠誠度を上げまくる。残りの金で内政向け武将の政治力を上げるのだ。
4年ほどで徳川家を滅亡させて飛騨山脈~木曽山脈の東側を制圧。ここからはオールスターで上洛を目指していく。

武将風雲録は本当に楽しいのである。なんでこんなに楽しいんだ、と考えてみると、いくつかの要素が挙げられる。
まず、複数の「使える」武将を活躍させていくのが楽しい。僕の場合、有能な武将たちにチームを組ませ、タスクを与える。
たとえば伊達政宗・成実のチームに東海道を、真田信之・幸村には中山道を、本多忠勝には北陸道を任せる、とか。
その裏で直江兼続がひたすら教育して内政担当の武将を育成する。政治力が70に達したら城主に任命、そんな具合。
複数の動きを同時にこなしながら全体を組み立てていく作業が楽しくてたまらんのだ。コーエーのSLGは、究極的には、
兵站つまりロジスティクスのゲームであると考える。軍事・内政の両方で必要な戦力をスムーズに振り分けていくゲーム。
また、進軍するコースもムダがないように、相手からの反撃を食らいにくいように、兵士数や鉄砲数を計算して動かす。
舞台が日本列島なのも楽しい。全国各地を旅行気分で、土地のつながりを味わいつつ領土を拡大していくのがいい。
(日本を舞台に人を使って戦略を練る点で『サカつく』も共通しており、それが僕がハマる要素なのかもしれん。)

というわけで、久々にどっぷりと楽しんでしまった。このゲーム、本当に飽きないんだよなあ。


2012.11.7 (Wed.)

過去ログと毎日格闘しておるわけです。2005年の僕は「物語性」という概念がメインテーマだったみたいで、
『ドン・キホーテ』を読んだり西部劇を見たりしてはフィクションがリアルに敗北する経緯を追っかけて過ごしている。
そんなログを読み返してみても、見事に今と考えていることが変わらないというか、いやまあこれはむしろ、
今の僕の考え方が地道に形成されていった時期だったんだなあ、としみじみ思うわけだ。今の僕の根拠が記録されている。
じゃあ翻って今の僕が書いているログはどうなんずら、と考えてみると、ひたすら毎日のやりくりの記録なのだ。
僕が目にしたものをできるだけわかりやすく描写する、その作業に追われている感じである。
それはそれでたぶん価値があるとは思うのだが、やはり抽象的なレヴェルでの思考が不足気味であるようには思う。
モノを考えるには時間的にも精神的にも余裕が必要なので、なかなかこれは急にどうにかできる問題ではないのだが、
あらためて反省をしているしだい。オレのアタマ、錆びついとりゃせんか、とちょっと不安になっているわけですな。


2012.11.6 (Tue.)

今日も今日とて過去ログ改修作業。2005年は出版社勤めをスタートした時期ということもあってか、文体が絞れている。
だから文章を激しく直していくようなことはないのだが、ログの分量が増えた時期でもあるので、とにかく進みが悪い。

それにしても思うのは、2005年はちゃんと本読んでDVD見てインプットしとったなー、ということ。
朝メシと昼メシを食いながらしっかりと読書をする時間が取れていたのは、今から考えるととてつもなく贅沢である。
家に帰るのもそこそこ早かったので、名作映画を週に複数見る余裕もあった。もう本当にうらやましい生活だ。
その分だけレヴューの内容が濃くなって、ログの分量が増えたわけだ。まあでも、よく脳みそを動かしていたと思う。

今はインプットよりもアウトプットに追われる生活スタイルになっている。これはあんまりよろしくない。
もっとしっかり、もっとがっつり、本を読みあさってDVDを見まくりたい。呆けているヒマなんてないんだよ。


2012.11.5 (Mon.)

11月に入り部活が18時までとなったので、その分だけ日記の過去ログ改修作業に時間を割くことができる。
怒濤の旅行と忙しい毎日のおかげで、最近はすっかり改修作業が滞っていたのだが、これを機に一気に進めていく。
なんせ残っているのは2005年のログだけ。なんとしても早く片付けて、今年の日記に集中したいものである。


2012.11.4 (Sun.)

J1の試合も観た。J2の試合も観た。JFLの試合も観た。……となれば、なでしこリーグの試合も観なきゃね!
ということで、自転車にまたがると、環七をひたすら北へと走る。板橋区で国道17号にスイッチし、さらに北へ。
目指すは浦和駒場スタジアム。浦和レッズレディース×INAC神戸レオネッサの試合を観戦するのである。

なでしこリーグは、気がつけばいつのまにか、INAC神戸の一強時代となってしまっている。
まあやっぱり一度はINACのサッカーを観戦しなきゃな、と思っていたのだが、もう11月。
INACが首都圏に来る機会は今シーズン、もうこれが最後となってしまったのである。そりゃ行くしかないわな。
ちなみに前節、INACは優勝を決めた。ウチのサッカー部員は「だから田中陽子や仲田歩夢が出るかも!」と鼻息が荒い。
まあヤングなでしこの面々が試合に出るならうれしいが、僕としてはとにかく女子サッカーの上位対決を見たいわけだ。

どんな試合になるのかワクワクしながらペダルをこぎ、埼玉県庁の脇で右折して浦和駅前を目指す。
僕としては当然、どれ埼玉県庁のツラでも拝んでやろうかと軽く振り返ったら、なんとびっくり、耐震補強だらけ。
おかげで以前とはまったく異なった表情となってしまっていたのである。こりゃ撮るしかねえ、と方向転換。
県庁の敷地に入ると自転車を降りて正面にまわり込み、ファサードを撮影。いやーこれには驚いたわ。

 
L: 埼玉県庁。県庁舎のファサードはすっかり耐震補強のトラス構造に覆われてしまっていたのだ。驚いたわー。
R: ツタを生やすとは考えたな。耐震補強のファサードについてはもっとしっかり考えないとなあ(→2012.4.1)。

埼玉県庁前の下り坂から、浦和駅へ向けてのじっとりとした上り坂へ。ここはあんまり変わらんなあ、と思いつつ走る。
そうしてガードを抜けて駅の東側へ出てびっくり。真新しい商業施設ができあがっているではないか。
そういえば、浦和駅といえば西口ばっかりで、東口がかつてどうだったか、まったく記憶に残っていない。
大規模な再開発ぶりに驚愕しながら駒場スタジアムへの道に移る。ちょっと来ないと街は大きく変化してしまう。

浦和レッズの旗が並ぶ通りは、スタジアム方面へと向かう人であふれていた……と言えるくらいの密度だった。
今日の試合はJ1じゃないぜ? 女子サッカーだぜ?と思わずツッコミを入れたくなる風景。でもこれが現実なのだ。
浦和という街のサッカーに対する熱×なでしこジャパンの人気=この人数、というわけだ。いやはや、すごいものだ。
歩道を行く人の波に乗るようにして、快調に駒場スタジアム入口の公園に到着。でも入口はボトルネックで苦労した。

スタジアムの敷地内に入っても、やっぱり人が多い。老若男女どの年齢層もそろっているが、高齢者層の多さが目立つ。
とりあえずメインスタンドに入ったのだが、キックオフ1時間前とは思えないほどに、すでに座っている人ばかり。
浦和の皆さんはサッカー観戦通だから早めに来る習性があるんだろうけど、いやそれにしてもこれは多い。

  
L: 浦和駒場スタジアム。浦和サポにとっては聖地なんだそうで。ここでの浦和戦は日本でいちばんチケットが取りにくいそうな。
C: ピッチの様子。メインスタンドの端に陣取る浦和サポの声がめちゃくちゃきれいに反響する。感動してしまったよ。
R: 試合開始直前のメインスタンドの混み具合。ギッチギチでございます。高めの年齢層がいっぱいいた印象。

しばらしくして両チームの選手が練習をスタート。マッチデープログラムを読みつつその姿を眺める。
鳥かごなんぞをやっているのだが、やっぱり上手い。ワンタッチできれいにあらゆる方向へボールが出るもんなあ。
男子のような力強さはないにせよ、テクニックはまったく引けをとらないわ、と思うのであった。

さて試合開始。INACで注目すべきは、田中陽子がFWとして先発したということか。
澤も大野も近賀も川澄も海堀もいる。得点女王の髙瀬もいる。スタメンのラインナップがもう、反則級の豪華さだ。
対する浦和レッズレディースでは、猶本光がボランチで先発。ヤングなでしこからはGK池田とMF柴田も先発。
なでしこジャパン中心のINACに、ヤングなでしこの要素が強い浦和。まあこりゃ、やや浦和贔屓で観ていくことにするか。

 
L: いわゆる「出島」のINAC神戸サポ。浦和レッズの試合では、ここが究極のアウェイ状態になるそうで、納得。
R: 田中陽子に澤のアネキ。しかしまあ、このふたりが同時にプレーするのを見られるとは、贅沢な試合だなあ。

なんせ今シーズン、INACは無敗で優勝を決めてしまっているのである。浦和はどれだけ持ちこたえられるか。
常識的にはそういう見方になると思う。が、実際のところは、浦和がよく踏ん張って対等に戦っていた。
浦和は何度かボールをしっかり保持して相手陣内に侵入する。でも最後までなかなか攻めきれない展開が続く。
INACは浦和の攻撃を止めるとそのままカウンターを仕掛けていく。体を張って浦和はそれをしのぐ。
しかし相手の懐に入っていくその深さは、明らかにINACの方が上だ。INACの方が、体の強いプレーが目立つのだ。
さらに浦和の攻撃をよく見ると、右サイドの柴田がボールを受けはするものの、そこから前に出せない場面が多い。
これはつまり、INACの守備への切り替えの速さ、ブロックをつくる速さが浦和の攻撃を上回っているということだ。
INACの強固な守備ブロックの前に、浦和はボールは持つことはできも、それを打開できるだけのものがなかった。
手詰まりになったところでバックパス、あるいは強引に通そうとして引っかかる、その繰り返しとなる。
INACはボールを奪うとCBから落ち着いてビルドアップ。サイドからスピードに乗って崩す動きを強めていく。

  
L: 浦和の猶本。長袖なのはいいけどいくらなんでも長すぎるぞ! これじゃまるで『オバQ』のハカセじゃねえか。
C: ドリブルで仕掛ける田中陽子。やっぱり田中陽子はかわいいとあらためて思いましたとさ。身のこなしに華があるわ。
R: この日はMFとしてプレーした川澄。そのプレーぶりは意外とフォトジェニックではなかった。わりと泥臭い系。

先制したのはINAC。前半30分、川澄から出たパスを田中陽子が一瞬で振り抜いてゴールを決めた。
ペナルティエリアの外から狙ったブレ球で、田中陽子の持ち味が存分に出たシュートだった。
(観戦していたウチの部員は後で「きれいだった……」と、恍惚とした表情で感想を言っていた。)

こうなると浦和は猶本を中心にやり返してほしいのだが、なかなか猶本が周りと噛み合わない。
猶本はたぶん「この辺りに出せば取られない」という感覚でパスを出していると思うのだが、ことごとく、
そこに浦和の選手がいないのである。スペースは見えているけど味方が走り込まないという連携の悪さ。
柴田は柴田で個人としては迫力あるいいプレーをするのだが、こちらも味方がうまく連動しない。
そんな具合に浦和の攻撃は単発気味で、かえってINACのカウンターでピンチになる場面が増えていく。
こないだの日本代表のブラジル戦に少し近い、強者のカウンターサッカー(→2012.10.16)の要素が垣間見えた。
結局そのまま0-1で前半は終了。このまま浦和はボコられてしまうのか……という予感の漂うハーフタイムとなった。

  
L: 田中陽子による先制点の直前のシーン。シュートへの判断が速かったのでシャッターを切るタイミングが合わなかった。
C: ハーフタイムに鳥かごをする浦和のサブの皆さん。ぜひともボンバーヘッド荒川さんにはもう一花咲かせてほしい。
R: こちらはハーフタイムのポム。なんかすげえかわいい写真が撮れてうれしいぜ。ショートもいいねえ。

後半開始直後の47分、まだ集中力が高まっていない浦和の隙を衝くようにして、INACの追加点が生まれる。
FW髙瀬がGKのはじいたボールに飛びつくようにしてゴール。すばらしい反射神経に、周囲の穏健な浦和サポたちは、
「こりゃしょうがねーや……」と納得せざるをえないのであった。さすがは今シーズンの得点ランクトップだわ。

その後もINACが安定した守備から鋭い攻撃を仕掛ける場面が続く。浦和はかなり押し込まれ気味となってしまう。
INACは右MFの川澄から絶妙なスルーパスがバンバン出る。川澄の多彩なサッカーセンスには舌を巻くしかない。
しかし浦和の守備陣は落ち着いて対処してみせる。そのうちに、だんだんと浦和の反撃にしつこさが出てきた。
まあ要するに、押し込むことで高くなったINACのディフェンスラインの裏のスペースを狙う積極性が出てきたのだ。
72分には吉良が左サイドから粘ってゴールに近づき、ほとんど角度のないところからGK海堀の脇を抜き、1点を返す。
前半の浦和との違いは、狭いスペースでパス交換をする勇気が出てきたこと。ワンツーは意外と距離を稼げるのだ。
また、途中交代で入ったMF藤田が効果的だった。ミドルレンジのパスを狙って連携がイマイチな猶本とは対照的に、
藤田はつねに味方といい距離感を保ってFWに受けやすいボールを供給していた。さすがはヤングなでしこの主将だ。
ちなみに藤田は身長が152cmということで、ピッチ上でも格段に小さい。153cmの柴田よりぐっと小さく見えるのはなぜだ。

でもやっぱり地力に勝るINACが決定的な3点目を奪ってしまう。80分、ゴール前に飛び込んだ中島が頭で合わせた。
残り時間とこれまでの試合経過を考えると、浦和にとってはかなり痛い失点となってしまった。

  
L: 後半開始直後の髙瀬のゴール。決定的瞬間が撮れてしまったわ。  C: 中島のシュートがGKの頭上を抜くの図。
R: 84分、ついにポム登場。田中陽子はすでに交代していたが、ヤングなでしこのきれいどころをみんな見られて大満足。

84分にはポムこと仲田が登場。同時に浦和も荒川を投入。ポムと荒川が並んで出番を待つ光景はなかなか強烈だ。
ところが仲田はなかなか持ち味を発揮できない。ディフェンスから縦パスが入っても、なかなか前を向けずにバックパス。
浦和の守備がべったりマークについていたこともあるのだが、そこはやっぱり多少強引でもドリブルを仕掛けてほしかった。
川澄に代わって右サイドに入ったのだが、不慣れなポジションなのか積極性が見られなかったのは非常に残念である。

後がない浦和はINACの攻撃をカウンターにつなげようとするのだが、これを絶妙のタイミングで澤がカットしてしまう。
パスカットで観客をどよめかせることのできる選手ってのは初めて見た。本当にいい位置にいて相手のチャンスをつぶすのだ。
今日の澤はそんなに運動量がない印象で、攻撃に絡む場面もあまりなく、非常に守備的に後方支援のプレーをしていた。
そんな澤は今でも十分凄いのだが、20代のころには前線でどんなプレーをしていたのか、いい意味でまったく想像がつかん。

そしてアディショナルタイムに入って1分、浦和が意地のかたまりのような攻撃でINACのゴール前に殺到。
最後は加藤がゴールのど真ん中にシュートを入れて2-3となる。しかしほどなくして試合終了。

  
L: なでしこジャパンのレジェンドである澤と荒川の対決。近賀ねえさんもいるな。きちんと生でプレーが見られてよかった。
C: 交代後、軽くウォーミングアップしてから体育座りで試合を眺めている田中陽子の図。マニアックですか?
R: アディショナルタイムに浦和は意地のゴールを決める。むしろ王者・INAC相手にここまで粘ったことを評価すべきか。

さすがになでしこリーグはJ1ほどの殺伐とした雰囲気はなく(まあ、J1が殺伐と言っても知れてるけどね)、
選手たちはバックスタンドやゴール裏やメインスタンドに丁寧にお辞儀。出島のINACサポは浦和コールで締めくくる。
この日は実に7330名の観客が駒場に詰めかけたのだが、ホームが負けたとはいえ、非常に満足度の高い内容だった。

  
L: メインスタンドに挨拶する浦和の皆さん。惜しかったなあ。  C: こちらはINAC。うーん、有力選手ばっかりだ。
R: ゴール裏に挨拶を終えて戻る田中陽子。さすがにいい脚してますな。……って、そんな目で見てばっかりですいません。

帰りに横断歩道で偶然、ウチの部員に遭遇。自転車でお一人様で観戦に来ていることが、これで証明されてしまったわ。
で、帰りは国道17号をひたすら南下。行きとは違って緩やかな下り坂になるのでずいぶんと楽ちんである。

一気に板橋区まで出てしまうと、環七に戻らずそのまま国道17号をひたすら走っていく。
よく考えてみたら、きちんと国道17号を走るのはこれが初めてではないか。見慣れない風景がやけに新鮮だ。
文京区のど真ん中を走って東大に出る。やはりこの辺りはハイソな雰囲気だなあと思うのであった。

坂を下って秋葉原に入り込んだところで思い出す。そうだ、この自転車を修理に出すんだった、と。
買って半年もしていないのにブレーキは交換が必要なほどすり減り、後輪の調子もよろしくない。
以前に比べ、購入時の初期状態のセットがどうもヤワになっている印象なのである。困ったものである。
で、神保町に移動して自転車の修理を依頼。そのまま日記を書いて過ごし、修理が終わると受け取って秋葉原へ。
秋葉原では特にこれといって買い物をするわけでもなく、スタ丼を食うのみ。新メニューの「塩スタ丼」が気になる。

帰り道、皇居の近くを通ったら、東京駅のライトアップで賑わっていた。昼も夜も観光客がいっぱいだ。
というわけで、昨日は昼の写真だったけど、今日は夜の東京駅の写真を貼り付けてみる。

 ライトアップされた夜の東京駅。それにしても人でいっぱい。

修理してもらった自転車はさすがに非常に快調で、浦和まで行ったときの苦労はなんだったんだ、という思い。
やっぱり自転車はこまめにメンテナンスをしておかないといけませんな。


2012.11.3 (Sat.)

circo氏が上京してきたので、そのお相手。いつもどおりに僕の方で作業を済ませると、潤平の方へ移動。
作業の前にメシを食いつつ建築談義。結果、僕は安藤忠雄の「光の教会」をいずれ見に行くことに決まった。
ふたりから「ぜひあなたの意見を聞きたい」と言われてしまったからには、行かねばなるまい。いずれね。

その後は潤平宅で作業。僕の部屋が完全なるカオス状態となっているのとは対照的に、潤平の部屋はスマートそのもの。
どうすればこういう状態を維持できるんだ、とずっと首をひねって過ごしていたのであった。いや本当に不思議だ。
あとは潤平が僕と同じく無印良品のユニットシェルフを使っていることにあらためて気づいて、妙に納得。

作業を終えると、今回はcirco氏からのリクエストで、東京駅へと移動する。
東京駅の駅舎は先月、リニューアル工事を終えたばかり。長らく戦争の被害を応急処置したままの姿でいたが、
このたび竣工当時の姿に戻す5年がかりの工事が無事に終わったということで、大きな話題となっているのだ。
実際、こないだの姉歯祭り(→2012.10.6)の際、東京駅での人混みがあまりにひどくて乗り換えに大いに手間取った。
今、東京駅は東京の中でも最も人気な観光スポットのひとつに躍り出ているのである。いっちょ行ってみよう、と。

といっても、circo氏は単純におのぼりさん的な興味関心から東京駅に行きたがっているのではなく、
リニューアルぶりが非常に気になるから見たい、ということなのだ。なんでも飯田の知人が「あれはハリボテ」と評したそうで、
本当にハリボテなのかこの目で見てやろう、というわけ。特に今回は全国各地の古い建築を見て歩いている僕がおり、
僕なりの意見も聞きつつ実態を見てみたいそうだ。さらにそこから、建築の歴史性についても考えてみよう!ということだ。

電車を降りて、まずは丸の内北口へ。改札を抜けるとさっそく目の前には人混み。おのぼりさんがみんな上を向いとる。
なるべく柱の近くで眺めて邪魔にならないようにしてくれ、との貼り紙があるほどで、ケータイにスマホにデジカメだらけ。
そんなことを言っている僕だっておのぼりさんに分類される側なわけで、同じようにデジカメで天井を撮影してみる。
確かにリニューアルはきつめだが、ハリボテと表現できるほどにひどく安っぽいわけではない、といったところか。
まあ竣工当時はこんなもんだったんでしょ、ということで素直に結論づけて外に出るのであった。

外に出てから眺める駅舎は、やはり素材が新しいのでそれ自体に風格は感じないものの、形の説得力はすばらしい。
辰野金吾は大の相撲好きで、息子を相撲部屋に入門させてしまうほどの好角家だったそうで、
東京駅の両翼のドームは即ち大銀杏なのだ、とは確か藤森照信の指摘だ。なるほどそう思わせる仕上がりである。
横断歩道を渡って新丸ビルの足下へ移動し、そこから東京駅の正面へとまわり込む。日差しはすっかり冬のもので、
角度がないので日なたと日陰のコントラストがきつすぎる。これは撮影しづらいわ、とボヤきつつ撮影。

  
L: 東京駅のドーム内。僕も天井を見上げて撮影なのだ。竣工当時はまさにこんな感じだったんだろうねえ。
C: 東京駅・丸の内北口。これからどう古びていくかが勝負だね。それにしても人が多い!
R: だいたい正面から眺めた東京駅。とにかく撮影には厳しい日差しだったので、これはまたいずれ再挑戦しましょう。

それにしても、東京駅の周辺はめちゃくちゃな人出である。文化の日の行楽シーズンであるとはいえ、
ここまで東京駅周辺が大混雑になったのは、開業当時以来じゃないのかってくらいの大賑わいぶりである。
ありとあらゆる場所が人で埋め尽くされているといってもまったくオーヴァーではないほどの混み具合だ。
circo氏とふたりで、わかっちゃいたけど、ここまで凄まじい人出とは思わなかった……と呆れるのであった。

  
L: 新丸ビル。かつての丸ビルのファサードの形状だけを残し、現代の素材で置き換えた。まさしく換骨奪胎。アリだな!
C: 東京中央郵便局。1933年竣工、吉田鉄郎設計のDOCOMOMO物件もファサード前面だけを残して改築されちゃったよ。
R: 三菱一号館。一度はあっさりと壊されてしまったものの、「一丁倫敦」の基点ということで2009年に再建された。

circo氏のリクエストはもう一点、三菱一号館である。J.コンドル設計で1894(明治27)年竣工の近代建築は、
三菱が主導するレンガ造による丸の内オフィス街、いわゆる「一丁倫敦」の始まりとなった建物である。
ところがこの建物、三菱地所によって一度取り壊されているのだ。1968年のことで、重要文化財に指定される直前に、
隙を狙って解体してしまったという。その跡地には、三菱商事ビルヂングが1971年に竣工している。
やがて2004年になって三菱地所は周囲の建物とセットでの建て替え計画を発表し、三菱一号館の再建が決まった。
実はこの計画で一緒に解体されることになった丸ノ内八重洲ビルヂングは1928年竣工の歴史的建造物であり、
本物の近代建築を壊してレプリカを再建するという、正直なところよくわからない計画となっていた。
かつて三菱一号館を抜き打ちで壊した件といい、どうもやることがスマートでない印象がしてしまう。
ともかく、当時の素材を再現しつつ現代の要素も加味しながら、2009年に新たな三菱一号館が竣工したのだ。

 三菱一号館裏の中庭。さすがに上手い。居心地のいい滞留空間となっている。

三菱一号館美術館は純粋に美術館なので、今回はパス。入館無料の歴史資料室には入ってみることにしたのだが、
入口がよくわからん。結局、三菱一号館の周囲を一回りする破目になってしまった。で、中に入って展示を見る。
基本的には三菱一号館の紹介と、全国各地の赤レンガ建造物の紹介。赤レンガ建築マップを指差してcirco氏は、
「あなたは何箇所くらい行ったことあるの?」と訊いてきた。数えてみたら6~7割で、過半数だった。自分でびっくり。
奥には三菱一号館の精密な模型が置いてあって大興奮。「いくらだと思う?」「うーん、500(万円)ぐらいかな」
「オレもそう思う」というような会話をしつつ眺める。模型のデキはさすがにすばらしく、もっとかかっているかもしれん。

丸の内の街並みは威厳を感じさせるファサードで固められており、近寄りがたい雰囲気で統一されている。
海外だとその辺は意外と緩やかであるような気がする。ニューススタンドがあちこちにあるし(→2008.5.11)。
だから地上の丸の内を歩いていると、身近な感じの店がなくってなんとなく疎外感をおぼえることになるのだが、
実は地下にもぐってしまえば商業の匂いはしっかりとあるのだ。これが丸の内のプライド意識だと思うのである。
で、地下のスタバでマンゴーフラペチーノを2人分注文し、それをいただきつつ三菱ビルまで戻る。
(僕もcirco氏もマンゴーが「なんとなく好き」なのだ(→2008.7.3)。これは遺伝か、と思う。)
というのも、16時からの便でスカイバスの予約をしておいたからだ。運よく、この便最後の席にすべり込めた。

スカイバスとは、丸の内でよく見かける、オープンな2階建ての観光バスだ。2004年に運行を開始したのだが、
実は僕はずーっとこれに乗ってみたくて乗ってみたくてたまらなかったのだ。でも男一人じゃ乗る機会なんてないじゃん。
で、今回circo氏が東京駅をテーマに提案した際に、それならスカイバスにも乗ろうぜ!と強硬に主張したのである。
いくつかコースの設定があるが、最も標準的な50分の「皇居・銀座・丸の内コース」にする。料金は1500円也。
僕は思わず「うわっ、高え!」と口走ってしまったのだが、circo氏はこともなげに料金を支払いチケットを無事に確保。
まあとりあえず、これで長年の夢が叶うことになったのだ。ワクワクしながら停車しているバスに乗り込む。
乗客の外国人比率は意外と低く、日本人が多い印象。この中に東京都民はどれくらいいるのか、非常に気になる。

 スカイバスの側面。2階建てバスの天井を大胆にカット! そりゃ乗りたいでしょ。

だいぶ日が傾きはじめており、ちょっと寒い感じ。木枯らしが吹くの吹かんの、という時期なのでしょうがない。
しかしいざバスが動きだすと、もうその瞬間から十分面白い。だって、見える景色がまったく違うのだ!
見慣れた東京の街並みのはずなのに、天井がないと本当に感覚が違ってくる。すべての景色が純粋に飛び込んでくる。
バスはまず皇居方面へと向かうのだが、イチョウ並木の広がる枝の真下を走る。手が届かんばかりの位置に枝がある。
この臨場感、迫力は、絶対にほかでは味わうことができないものだ。乗客たちはもうそれだけで大喜びになってしまう。
さらに、交通標識も近い。頭上すぐを案内板がかすめる体験は、思う以上にスリリングである。いや本当にしびれたわ。

 
L: スカイバスは東京駅前を通過して皇居へ。御幸通りのイチョウが見事で、これは思わず手を伸ばしちゃうよね。
R: 見慣れているはずの景色がまったく違って見えるのが本当に面白い。頭上の標識が近くてけっこう怖いのがまた面白い。

バスのルートは、序盤は皇居を左手に眺めながら、周辺の施設を紹介していくというスタイル。
実に単純と思いきや、まったくもってネタに事欠かないのである。冷静に考えるとまあ当然ではあるんだけど。
皇居ランナーでひしめく堀端、そして堀の向こうには重要文化財クラスの江戸城の櫓などがしっかり見える。
そうかと思えば反対側には高さ119mの東京消防庁があり、林昌二のパレスサイドビル(→2011.1.30)があり、
ブリヂストンの石橋正二郎が建物を丸ごと寄贈した国立近代美術館があり、旧陸軍近衛師団の工芸館がある。
対する左手の皇居には旧江戸城の門が次々と現れてキリがない。これは息をつくヒマがまったくないくらいの面白さだ。

道は竹橋を境に上り坂となる。平らな江戸の東側から起伏の多い江戸の西側へ。その変化がしっかり体感できる。
江戸城はもともと淀橋台の突端に築かれた城だ。淀橋台は武蔵野台地の東の端っこに位置している。
つまり江戸城はかつて、多摩地区からずーっと東に延びてきた武蔵野台地が海にぶつかる、その岬に築かれていたのだ。
当時、江戸城の東側には日比谷入江と呼ばれる湾があり、現在の大手町の辺りまでが海だったそうだ。
入江を挟んだ対岸には江戸前島という半島。現在の日本橋から銀座までがだいたい江戸前島の範囲になるという。
大坂夏の陣が終わって江戸が日本の政治の中心に確定したことで、江戸城下の都市化が急激に進行する。
神田山を削った土で日比谷入江が埋め立てられ、矩形の街割で住宅地の開発が盛んに進められていったのだ。
そうして江戸城の南側と東側に平らな低地が造成された。直線的な形状の堀は、日比谷入江の名残なんだそうだ。
対照的に武蔵野台地の起伏を残した江戸城西側では、谷戸をもとにして堀が掘られているので形は複雑。
スカイバスはそんな土地の記憶を体感させてくれながら、千鳥ヶ淵を右手に眺めて南へ針路を変える。
なお、千鳥ヶ淵の脇を西へ抜ける道は桜並木となっており、春には絶景が楽しめるとのことである。そりゃたまらんわ。

左手には江戸城址の見事な土塁、そして右手に現れるのはイギリス大使館。さすがにいい位置を押さえているものだ。
まっすぐ南下して半蔵門。TOKYO FMでお馴染みだが、その少し奥にはワコールの麹町ビルが建っている。
黒川紀章の設計で1984年竣工、ミシンをモチーフにしたそうだ。皇居周辺にはポストモダン建築もしっかりあるのだ。
そしてすぐに、国立劇場(→2008.1.13)と最高裁判所のコンビネーションがお出迎えである。
最高裁判所は岡田新一だな鹿島の出身だぜ苫小牧にけっこう建物があるのよ(→2012.7.1)なんて話をする。
僕もcirco氏もどっちもウンチク持ちなので、次から次へと目にしたものについて話が止まらない。

ここでスカイバスはいったん皇居から離れる。そう、国会議事堂へ寄り道するのである。
バスはまっすぐに正面からアプローチしていくのだが、さすがに11月の16時ともなると夕日が眩しいのなんの。
本来なら最高のシャッターチャンスなんだろうけど、あまりの大逆光に乗客はみんなしょんぼりなのであった。

 大逆光にめげずに撮影した国会議事堂。さすがに皇居の周りは観光資源の宝庫。

国会議事堂の手前を曲がるとそのまま坂を下って霞ヶ関の官庁街へと突入する。
北側はさっきの竹橋のところが武蔵野台地と平野の境目だったのだが、南側では霞ヶ関が境目にあたるのだ。
スカイバスはゆっくりと潮見坂を下って外務省(DOCOMOMO物件)前に出る。その名のとおり、坂の下はかつて海だった。
潮見坂のなだらかな角度は、海へと沈み込む砂浜をきちんと想起させる。休日の霞ヶ関だって十分楽しめるのだ。
そうして再び皇居方面を向いて進むと桜田門。左手には警視庁、右手には法務省の旧本館が現れる。
警視庁の建物を仰ぎ見る構図はテレビなどでもうお馴染みである。法務省旧本館の赤レンガはオフィス街で孤軍奮闘。
そのままバスはまっすぐ進み、左手に祝田橋、右手に木々が鬱蒼と茂る日比谷公園を眺めつつ、銀座方面へと向かう。

新数寄屋橋から有楽町界隈に入る。さすがに休日の夕方だけあって非常に賑やかだ。
このまままっすぐ行けば銀座なのだが、当然、休日の銀座は歩行者天国なのである。その手前で左折となるのだった。
circo氏はけっこう残念がっていた。確かに、銀座のど真ん中をオープンなバスで走り抜けるのは格別に気持ちいいだろう。
そしてここでバスはひどい渋滞に巻き込まれる。ゆったり進む中、東急ハンズ銀座店(→2010.11.7)のあるマロニエゲート、
アンテナショップの聖地と言える東京交通会館(→2011.5.7)、無印良品の有楽町店(→2010.11.7)などを確認。
やがて鍛冶橋の交差点でバスは左折。ここのガードは高さ制限が3.8mで、スカイバスの高さはちょうどギリギリだという。
さすがに運転手はよくわかっていて、このガードをあえてスピードを出して通過してみせる。まるでアトラクションだ。
ふだんと違う角度から街を眺められるだけでも十分面白いのに、そういう気の利かせ方もしているのか、と感心した。

ガードを抜けると東京国際フォーラム。ここからしばらく、かつて一丁倫敦と呼ばれた丸の内のオフィス街を回遊。
その間、circo氏と「これって、渋滞状況に合わせてフレキシブルに50分のコースをつくることができるねえ」とか、
「東京ってのは50分間まったく飽きさせないほど観光資源があって、大したもんだなあ」とか、感想戦。
スカイバスは絶対に面白いはずだ!と僕は確信してcirco氏を誘ったわけだが、ここまで充実したものだとは予想外だった。
これはぜひ、いつか姉歯祭りのメンバーで乗らなければ。それぞれにウンチクを披露しあうのがすごく楽しそうだ。
そんなわけでスカイバスはきっちり50分、最後にもう一丁イチョウの下を抜けておしまい。すばらしかった。

バスを降りるとさすがに辺りは暗くなりはじめていた。今度はさっきと反対側の南側から東京駅にアプローチしてみる。
丸の内南口のドームも確認し、人の波をかき分けるのに苦労しながら正面を見上げて、これにて東京駅見学は完了。

 
L: 東京駅・丸の内南口。古びることは、存在価値を認められた証だ。東京駅がこれからどう古びていくか、楽しみだ。
R: 正面入口を見上げたところ。今のところは、元からあった部分と新しい部分とがまだ十分にフィットしていない印象。

東京駅の大丸では9月に東急ハンズ東京店がオープンしたばかりということで、当然、ふたりで行ってみる。
銀座店ではオシャレな雰囲気を出しつつもハンズ本来のマニアックな品揃えもきちんと両立していたが(→2010.11.7)、
東京店はとにかくオシャレ優先で品揃えは最低限という感じ。むしろ、ハンズを名乗る最低限はこの辺なのか、と思う。
感触としては梅田店(→2011.5.15)にかなり近い。大都市の駅ビル内店舗の典型例ってことか。
circo氏と東急ハンズは今後どうなっていくのかねえ、なんて話をするのであった。で、このまま東京駅で解散。

まあとにかく、いくら今いちばん話題の場所とはいえ、東京駅の混雑ぶりにはまいった。でも本当に楽しかったわ。


2012.11.2 (Fri.)

明日の朝には粗大ゴミを出す予定になっているので、部屋の片付けを必死で進めていく。
しかし思うように片付かない。膨大な量のゴミを出したけど、部屋の中は相変わらずのカオス状態のまま。
やはりモノが多すぎるのである。おまけにことごとくホコリをかぶっているので、その除去に手間がかかる。
こないだ買ったユニットシェルフ(→2012.10.28)にモノを徹底的に詰め込んで、今日はそれでヨシとする。

必死の片付けを進めていって、ひとつだけわかったことがある。
それは、親が買ったものは使わないし、自分が買ったものは使う、ということである。
大学入学時に親が用意したものを、今回ゴミとして大量に捨てたのだが、振り返ってみるとまあ見事に使わなかった。
対照的に、僕が自分で気に入って自分で金を出して買ったものは、なんだかんだでよく使っているのである。
知らず知らずのうちに、僕は購入者としての責任をきちんと果たしているのだ。この事実に気づいて驚いた。今さら。

さらによく考えると、僕は国立にいるときと今とでは、金の使い方が明らかに違うのである。
国立時代はとにかく趣味のことにしか金を使っていなかった。服もインテリアも買った記憶がまったくないもんね。
今の僕は国立時代に買ったような娯楽用品はほとんど買わなくなり、服などにそこそこ金をかけるようになっている。
当時はまったく気にしなかった方面にきちんと金を使っているというのは、これは成長だなあとしみじみ思う。
(いま思い返すと、大学時代のファッションはこだわりがなかったとはいえ、恐ろしいものがあったなあ……。)

ってことはつまり、国立時代に来ていた服などは、もう着ないくせに今までずっと持っていたのである。
このたびその事実に気づいて、自分で買わなかったけどなぜか持っていたものを大量に廃棄したわけだ。
おかげで部屋の中はカオス状態であるものの、押入の中はスカスカに空いた。あとはそこにモノを移動させながら、
しっかり取捨選択をして部屋全体の質量の軽量化を図っていくだけだ。地道にがんばっていくとするのだ。


2012.11.1 (Thu.)

これは僕の個人的な印象なのだが、東京都の中学生は机の上に座ることに抵抗がないようだ。
僕にはまったく信じられないことだが、連中は平然と机に座ってはオレに怒られる。毎日その繰り返し。
いや、以前はもっとひどかった。オレがしつこく指導を入れることで、これでもマシになってはいるのだ。
なんせ3年前にはそのまま机の上に寝転がっている生徒もいたくらいだからな。あれは目を疑う光景だった。

いちばん信じられないのは、机の上に座る生徒を指導しない教員が異様に多いこと。
学校の雰囲気を悪くするのはまずその行為だろ、と思うのだが、基本的なしつけができない教員が多すぎる。
長くこの学校にいるベテラン教員が指導できない姿を目の当たりにすると、「そりゃ学校荒れたはずだわ」と呆れてしまう。
別にオレひとりがこの学校を変えた、なんて言うつもりはさらさらないし、そんな大それたことは考えちゃいない。
でも、もしオレがいなくなって、生徒に親しい態度を取りながらも学校の雰囲気を悪くする行為をこまめにつぶす、
そういうことを地道にやっていく教員がいなくなったらどうなるんだろ、とひどく不安になる。
まあそういう意味じゃ、オレがいなくなってからようやく、オレの存在価値が見えてくるんだろうな、と思う。
でもその頃には、オレ自身はそんな過去のことを気にするヒマもなく、新しい職場で必死になっているんだろうね。
まあとにかく、オレはオレのやり方でよりよい学習環境、生活環境をつくっていくまでだ。


diary 2012.10.

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